トヨタのAIの研究開発をしているTRI(Toyota Research Institute)CEOのギル・プット博士が「交通安全と人生の意義」と題した講演を行った。そこから見えてきたのはまったく新しい自動運転の姿だった!!
※本稿は2024年10月のものです
文:ベストカー編集部/写真:トヨタ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年11月10日号
■生成AIによってロボットが学習する
2023年、TRIはロボットに新しいスキルを時間をかけずに教えることを可能にする画期的な生成AIの手法を開発した。ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)の行動版といえる、ロボットの大規模行動モデル(LBM)の構築が可能になるものだ。
TRIの開発したロボットは道具を使って皿を洗ったり、ビニール袋のジッパーを開け果物を移したりと、複雑な作業を何回か失敗しながらも、タスクをしっかりと達成させている。
プログラムのコードを変えることなく、データを与えるだけで、ロボットはカメラ映像と触覚センシングを使って学習し、上達しながら達成していく。
つまり、人間がロボットにさまざまな動作を教えることによってロボットが自ら学んで行動できるようになるのだ。これを使えばロボットはさまざまなスキルを迅速にマスターできるといい、TRIは2024年末までに1000以上のスキルを教えるという目標を立てている。
ChatGPTのロボット版といえる技術が確立すると自動車の安全性向上にも大きな可能性を生むとギル・プラット氏は語る。
一方で、トヨタはドリフトのような高度な技術を持つ自動運転も開発中だ。現在量販車に搭載されているトラクションコントロールだけでクルマの衝突を回避することは実際不可能だが、ドリフトすることで高速でも障害物との衝突を避けることができるという。
ギル氏はここで興味深い動画を見せてくれた。2台のスポーツカーがどちらも自動運転で走っている映像だ。
先行車は次々と変わる軌道に応じてドリフトし、後続車は道路環境に合わせ、先行車との衝突をギリギリ避けながらドリフトして追従走行するものだ。安全かつ楽しいという、究極の安全運転がAIによって実現できるというわけだ。
ギル氏が目標とするのはモリゾウのAI版だという。「この技術によって衝突を防ぐために、必要に応じてモリゾウがクルマをドリフトさせ、さらにモリゾウが優しくドライビングを教えてくれる、そんなクルマを作りたい」と話す。
「重要なのはおせっかいすぎずドライバーのスキルを伸ばしていくことです」とギル氏が付け加えたことも覚えておきたい。
モリゾウさんのAIが入ったドリフトできる自動運転とは、言い換えれば「クルマ好きのための自動運転」であり、「FUN TO DRIVE」が自動運転でも実現するとなれば、クルマの未来は面白いんじゃないか!
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