AIを初めとする最新テクノロジーの普及は、自動車の世界にも多くの影響を与えている。新しいシステムが好きなアメリカでは、AIカメラを使った駐車違反検知まで登場しているほどだ。しかし、時代の過渡期のためか…トラブルもまだまだ多いようで…。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部
【画像ギャラリー】もう未来の世界じゃん!! AIカメラ搭載のニューヨークのバスを一挙に(5枚)画像ギャラリー■新システム導入につきものの「予期せぬトラブル」
駐車場不足に悩むアメリカ・ニューヨークで、世界有数の大都市が導入した最新テクノロジーが、思わぬ混乱を引き起こした。原因は、ニューヨーク都市圏交通公社(MTA)が今年初めから実施している、バスへのAIカメラ搭載による駐車違反の自動検知システムだ。
ニューヨーク都市圏交通公社によるAIカメラ搭載は違法駐車の摘発が主目的ではなく、あくまでも円滑なバス運行のための違法駐車撲滅運動である。特に力を入れているのが、バス専用レーンでの駐車違反車両の摘発である。
ただ、実に3800台もの車両に対して違反切符が発行されたのだが、そのうちの約900台は適法な駐車だった、というミスが発生した。
違反切符の発行前には人による確認プロセスが組み込まれていたにもかかわらず、約900人のドライバーが自身の無実を示す写真付きで違反切符を受け取ることになった。
【画像ギャラリー】もう未来の世界じゃん!! AIカメラ搭載のニューヨークのバスを一挙に(5枚)画像ギャラリー■公共の福祉のために導入が増加する監視カメラ
ニューヨーク都市圏交通公社の説明によれば、この混乱の原因は路線ごとのプログラミングの不備にあったそうだ。
あるルートでは合法的に駐車している車両を違反車両として誤認識し、別のルートでは取り締まり開始前にもかかわらず違反切符が発行されていたという。
市は迅速な対応を見せ、すでに支払い済みの罰金を返金。発行された違反切符を取り消すとともにシステムの不具合も修正済みだという。
さて、ニューヨーク都市圏交通公社は2024年末までに1020台以上のバスにこのシステムを導入し、さらに1,000台への追加設置を計画している。
AIカメラの搭載により違法駐車を摘発する駐車監視員という労働集約型の職種がなくなるのは、ニューヨークのみならず世界共通の話。足りない業種に労働力を回せたら良いのだが…。
どこの国でも監視カメラの設置台数は増加の一方を辿っているが、プライバシー保護の議論はほとんど聞かれない。それだけ“公共の福祉”が重んじられる時代に突入しているのだろう。
■ニューヨーク市の駐車場不足解決にも繋がる!?
すべての監視カメラをネットワークで繋げ、指名手配犯をAIが検出…、なんて時代もそう遠くない話だろう。バスの定時運行が確保されれば、公共交通機関の信頼性が向上し、結果として自家用車依存の軽減にもつながる。
つまり、ニューヨーク市の駐車場不足という根本的な課題の解決にも寄与する可能性を秘めている。
ニューヨーク都市圏交通公社の挑戦は、スマートシティ実現への重要なステップとして、世界中の都市に新たな可能性を示しているともいえる。AIと人間の知恵を組み合わせることで、より住みやすい都市空間の創造が、着実に進んでいくに違いない。
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