高齢化社会が進むなかで注目を集めている運転免許の自主返納制度。クルマ好きにとっては運転免許を返納したくないというのが本音だろうが、いつかは通らなくてはならない道……。ということで、今回は運転免許の自主返納について考えてみたい。
文/藤原鉄二、写真/写真AC
【画像ギャラリー】いつかは通る道だから知っておきたい運転免許の自主返納制度(6枚)画像ギャラリー■実はあまり進んでいない運転免許の自主返納
運転免許証の自主返納制度は、高齢者の操作ミスなどが原因の自動車事故の増加にともない、1998年(平成10年)4月に施行された改正道路交通法により導入された。
これは身体能力の低下など、クルマを運転することになんらかの不安を感じている人が自主的に申請して運転免許の取消しを受ける制度だ。
この制度が普及することで高齢者による事故が減少すると期待されたものの……。期待するほど返納率はアップしていないのが現状だ。
警察庁の発表によると、高齢者による重大事故が頻繁に報道された時には一時的に増加したものの、2020年以降、返納率が再び減少傾向となっている。
【画像ギャラリー】いつかは通る道だから知っておきたい運転免許の自主返納制度(6枚)画像ギャラリー■自主返納に年齢制限はなし!
運転免許の自主返納制度の対象となるのは、認知機能検査や高齢者講習の対象となる75歳以上の運転免許保有者と思っていないだろうか。
実は、自主返納には年齢制限はないのだ。
極端かもしれないが、たとえ50代であっても「運転中にヒヤッとすることが多くなり、運転に自信がなくなった」「認知機能の低下を医師から指摘されて運転を止められた」などの事情があれば、免許を返納することが可能だ。
国は年齢を限定せずに、加齢にともなう身体機能や判断力の低下により運転に不安を感じるようになったら返納を検討できるとしている。
稀ではあるが、若年層でも運転に支障が出るほどの認知機能の低下を引き起こす病気もあるため、日常生活に支障があるほど物忘れがひどいなど、気になる症状がある場合は一度、物忘れ外来や脳内科の医師に相談するのもお薦めだ。
【画像ギャラリー】いつかは通る道だから知っておきたい運転免許の自主返納制度(6枚)画像ギャラリー■免許を返納した後に再取得はできる?
当然ながら、一度免許を返納するとクルマの運転はできなくなる。
しかし「やっぱりクルマがないと不便なので免許を取り戻したい」と思う人もいるだろう。
そんな場合は再取得も可能だ。
ただし、自主返納により運転免許が取り消されると、運転免許試験の免除などの特例はない。そのため、初めて運転免許を取得した際と同様、適性試験、学科試験及び技能試験を受験し、合格する必要がある。
当然、受験や運転講習費用など、出費もかさむ。
ちなみに、75歳以上に義務づけられている認知機能検査で「認知症のおそれあり」と判定されるとその後に医師の診断を受けなくてはならない。
医師から認知症ではないという診断を受け、診断書を提出すれば認知機能検査を再受検できる(再受験時には別途料金が必要)。
いっぽう、認知症と診断された場合、免許取り消しとなる。もちろん、その後も再取得はできない。
【画像ギャラリー】いつかは通る道だから知っておきたい運転免許の自主返納制度(6枚)画像ギャラリー■公的な身分証明書がわりに使える運転経歴証明書
銀行口座の開設、役所の手続きなど、長年にわたり大活躍してきた運転免許証を手放すことに不安を感じない人はいないだろう。
ペーパードライバーであっても身分証明書がわりとして重宝するため運転免許証を更新し続ける人も多い。
そんな「身分証明書がなくなったら困る」という声を受けて2002年6月に導入されたのが運転経歴証明書。
運転免許証と同じサイズで、住所、氏名、生年月日、自主返納を受理された日などが記載されている。
ただし、返納時に自動的に交付されるものではないため別途申請が必要だ。運転経歴証明書の申請は、運転免許試験場、運転免許更新センター、警察署などで行うことが可能。
申請には、運転免許証、申請用写真1枚、手数料1100円が必要だ。地域によって異なるが、申請から受取りまでには2週間ほどかかる。
注意してほしいのは、運転経歴証明書の申請は、返納後(運転免許証の取消しを受けてから)5年以内に行う必要があること。その期限を過ぎると申請ができなくなってしまう。
ちなみに、大型免許を保有している人が大型免許の取消しを申請し、普通免許を残すということも可能だが、この場合は運転経歴証明書の交付は受けられない。
【画像ギャラリー】いつかは通る道だから知っておきたい運転免許の自主返納制度(6枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方