実はかなりの意欲作!? マツダ クロノスは「悲運の佳作」だった!! 【偉大な生産終了車】

実はかなりの意欲作!? マツダ クロノスは「悲運の佳作」だった!! 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はマツダ クロノス(1991-1995)をご紹介します。

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文:伊達軍曹/写真:MAZDA


■3ナンバー車税制改正に活路を見出したマツダ新体制の旗艦モデル

 マツダ カペラの後継車種ではあるものの、曲面を多用した流麗かつ美しいデザインを身にまとい、世界最小クラスの新開発V型6気筒エンジンを搭載。

 しかし当時のマツダの「5チャネル戦略」という無茶な戦略の犠牲者として、ごく短期間で静かに消えていった悲運の佳作。それが、マツダ クロノスです。

ファミリアとともにマツダの主力車種だったカペラの後継機種として誕生したクロノス。マツダ5チャンネル体制の中核を担うモデルでもあったため、その要因に数えられてしまうことも多い

 マツダ クロノスは、それまでのマツダの主力セダンだった「カペラ」に代わって1991年に登場した3ナンバーサイズのセダン。

 いわゆる3ナンバー税制が1989年に改正されたことと、同時期に沸き起こっていたバブル景気を背景に、当時は三菱ディアマンテなどカペラの競合車種が軒並み「3ナンバー化」を果たしていました。

 それに続けとばかりに、マツダはカペラより1ランク上となる3ナンバーサイズのボディをクロノスに与えたのです。

 クロノスに搭載されたエンジンは、前述のとおり新開発された世界最小クラスの2L V型6気筒DOHCエンジンで(このほかにオーソドックスな1.8L直4エンジンもライナップしていましたが)、なかなかの一品でした。

 そしてクロノスはデザインも、これまた前述のとおり従来の国産セダンとは大きく一線を画す、曲面を多用したボリューミーかつセクシーなものでした。

リアビュー。直線的なフォルムが一般的だった日本車の中にあって、クロノスの持つ流線的なデザインは一線を画していた(写真は海外仕様の「626」)

 デザインだけでなく実際に走らせてみても、マツダ クロノスはなかなかのものではありました。

 オールアルミ製の軽量な2L V6エンジンのフィールはきわめてシルキーで、どこかヨーロッパ車的なものを感じさせる「やや硬めだが、しなやかでもある」という乗り味も、乗る者を納得させるだけのものはありました。

 そのように「なかなかステキな新型3ナンバーサイズセダン」であったマツダ クロノスでしたが、当時は今と違ってセダンの人気が高かったにもかかわらず、その販売は超低空飛行が続きました。

 1994年10月にマイナーチェンジを行うなどの各種テコ入れは行ったのですが、結論として功は奏さず、1995年にはあえなく国内販売終了となったのです。

■マツダ迷走と時代の逆境の中を走り抜いたミドルセダンの佳作

 もちろん好みは人それぞれですが、基本的には「けっこういい感じのデザインだった」と言えるはずのマツダ クロノス。

 前述の基本エンジンである2L V6を中心とするその走りも、決して悪くはありませんでした。

 しかしなぜ、マツダ クロノスはあっという間に廃番となってしまったのでしょうか?

 ……これはもう「当時のマツダが採っていた5チャネル戦略の犠牲になった」としか言いようがありません。

エクステリアと同じく流線形のデザインが取り入れられたインパネ。マツダの5チャンネル体制とその失敗は、中核を担ったクロノスの名を冠して「クロノスの悲劇」とも呼ばれている

 今と違って日本国内での人気が今ひとつだった1980年代後期のマツダは、国内販売網を強化することで販売台数を増やし、その結果としてトヨタや日産に対抗する――というプランを立てました。

 その背景にはもちろん、当時の異常な好景気(今にして思えばバブル)がありました。

 で、マツダはそれまでの旗艦チャネルであったマツダ店に加えて、アンフィニ店(スポーツモデル中心)とユーノス店(欧州車イメージ)、オートザム店(小型車中心)、オートラマ店(フォードブランド取り扱い)という計5つの販売チャネルを構築し、それでもって「年間販売台数100万台を目指す!」とぶち上げたのです。

 ……それはそれでいいのですが、当時のマツダにとって「5つのチャネルそれぞれに、それぞれ用のモデルを供給する」というプランにはやはり無理がありました。

 なぜならば、トヨタや日産のような超巨大自動車メーカーと違い、当時のマツダはそんなに何種類ものプラットフォーム(車台)を持っていなかったからです。

 そして車台の種類が少ないですから、5チャネル戦略を遂行するためには同じ車台を使って「外側を少々変えました」というモデルを乱造せざるを得なくなりました。

 具体的に言うと、本筋のマツダ店向けに作られた「クロノス」の兄弟車には、下記の数多くの派生モデルが存在していました。

●MX-6|マツダ店向けの2ドアクーペ
●アンフィニMS-6|アンフィニ店向けの5ドアハッチバック
●アンフィニMS-8|アンフィニ店向けの4ドアハードトップ
●ユーノス500|ユーノス店向けの4ドアセダン
●オートザム クレフ|オートザム店向けの4ドアセダン
●フォード テルスター|オートラマ店向けのクロノス
●フォード テルスターTX5|オートラマ店向けのMS-6
●フォード プローブ|オートラマ店向けの2ドアクーペ

 ……自分で書いていても、もはや何がなんだかよくわかりません。そして「よくわかりません」というのは、当時の消費者にとっても同じでした。

 「何やらカタカナとか数字やらの似たような車名がたくさんあって、どれを買えばいいのかわからん。わからないから、トヨタ車を買おう」と当時の消費者が思ったかどうかは知りませんが、まあ当たらずといえども遠からずでしょう。

内装。悪名ばかりが語り継がれる「5チャンネル体制」ではあるが、一方でRX-7、ユーノス・ロードスター、AZ-1といった数々の名車たちも生み出した面も持ち合わせている

 結果としてマツダ クロノスは、いや、本家クロノスを含むクロノス兄弟は、「兄弟全員を合わせても月販1万台に届かない」という体たらくでした。

 そして1991年には崩壊したバブル経済のあと、本格的な低迷期に入る日本経済とともにクロノスも崩壊(販売終了)。マツダ自体もその後、深刻な経営難に苦しむことになりました。

 このようにいろいろあったクロノスですが、その車自体は「なかなかよくできたサルーン」だったと思います。時代のめぐり合わせに翻弄されてしまった佳作……と言えるでしょう。

■マツダ クロノス 主要諸元
・全長×全幅×全高:4695mm×1770mm×1400mm
・ホイールベース:2610mm
・車重:1220kg
・エンジン:V型6気筒DOHC、1995cc
・最高出力:160ps/6500rpm
・最大トルク:18.3kgm/5500rpm
・燃費:9.0km/L(10・15モード)
・価格:220万5000円(1991年式20VG 4速AT)

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