■なぜ海外では引き合いがあるのか? 水没車取材で見えたもの
正直、誤解も多い水害車。特に神経質な日本では比較的いいイメージは持たれておらず高値がつきづらい。それはフレームまで被害が及んでなくても、板金修復歴があるだけで下取り価格が下がってしまう状況と似ていて、日本車を骨の髄までしゃぶるロシアやアジアでは水害だろうが事故車だろうが、程度を見て買い取るという。
逆に水害車は事故車と比べて、フェンダーやらガラスやら欠損部品が少なく、電装品だけ直せば動くケースは多い。特にハイエースなどは内装を取っ払って改造するケースも多いので、機関さえ上等なら大丈夫! という感覚なのかもしれない。
ましてや日本では修復歴同様、水害車を販売する場合は告知義務がある。機関万全で匂いが残ってなくとも「水害車」と聞くだけで敬遠する人も多い。繊細すぎるニッポンならではの現象だ。
その点タウが凄いのは広い海外ネットワーク。世界119カ国に水害車や事故車の販売ルートを持っていて、佐賀豪雨ではロシア、パキスタン、UAE、フィリピンなどに多くが売られていったようで、被害ランクが高くても比較的値段がついたりする。
具体的にはグローバル人気のランクルやハイエース、プリウスは全冠水でも高値がつく可能性があるのだ。逆に国内向けの軽は厳しかったり。今回見たなかで具体的に興味深かったのは10年落ちのR35GT-Rで、シート上水害レベルでなんと買い取り200万円。行き先は決まってないが基本は海外とか。
また、事故車や水害車、故障車専門のタウのお仕事だが、水害車買い取りにしろ経済的支援、復興支援の側面があることはあまり知られてない。
例えば、水害に遭った被災者の方がまず優先するのは家屋。優先順位として「クルマより家」なので、まず家をキレイにし、乾かし、住めるようにすることを優先する。あげく大量の荷物を出す時に、急に駐車場が必要になり、突如「早くクルマをどかしてくれ」となる。
よって業者が意識しているのは早期引き取りであり、早期の値づけ。水害車がその後いくらの値段で売れるかを、すばやく予想し、市場価値を正確に見積もらなければいけない。高値で買いすぎると会社が損をするし、低値で買いすぎるとユーザーが損をする。
今もまだまだ水害車に値段がつくことを知らない人は多い。被災した時こそ冷静に。「水害車買い取り」をぜひネット検索していただきたい。
しかし、こういう被災シーンの場合、冷静に見積もりしている時間的心理的余裕がなく、すぐ駐車場を開けたい、いくらでもいいから持ってってくれ、となりタダで引き取られることも。逆にお金を払って持っていってもらうことも多いという。
〈小沢コージ〉
■水没したハイブリッド車は危険なのか?
ハイブリッド車やEVなど高電圧なバッテリーを搭載しているクルマは、水没した場合に漏電する危険性はあるのだろうか。
国沢光宏氏によれば、「国産のハイブリッド車ならクルマの取扱説明書に『事故時は触れないように』と明記されているが、これはメーカー側が万が一の漏電の危険性を勘案してそう記載しているのに過ぎない。
実際には漏電の可能性はない。なぜなら精密で大きな容量のブレーカーが瞬時に作動して漏電を防ぎ、仮に電池に釘が刺さったとしても漏電しないように設計されている」という。
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