ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2014年の企画「日本のGT 世界のGT」から、世界に挑んだ日本のGTカーたち10番勝負をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
文:国沢光宏、松田秀士、斎藤 聡、西川 淳
■勝負6:ステーションワゴンだってスポーツGTだ! レガシィツーリングワゴン vs BMW3シリーズツーリング(1989年)
残念ながらハードでの勝負はヒジョウに厳しかった。なんたって初代レガシィ、当時のスバルとしちゃ精一杯背伸びしたクルマでしたから。ご存じのとおりレガシィってレオーネの後継でございます。そのレオーネ、1.8Lターボながら、最高出力135ps、最大トルク20.0kgmという超ショッパさ。社運をかけて開発された初代レガシィ用に開発された新世代エンジンは2Lターボで200ps! こらもう涙ぐましい頑張りでしたね。
乗るとエンジンのトルクバンドは狭く、燃費超悪く、特殊な制御を行っていたパワステも一定の速度から急に重くなったりして。初期モデルはターボのトルクに耐えるATがなく、マニュアルしか設定されていなかったほど。それでも日本のステーションワゴンとして考えれば圧倒的な性能だった。荒っぽかったものの、ハンドリングはドライビングプレジャーがタップリあったし、スポーティだった。当時、世界最高性能のABSも装備可能だったのもポイント。
日本では1991年から導入されたが、当時のステーションワゴンでGTの代表といえば、BMWの3シリーズであります(2代目のE30)。170psを発生する2.5L 直6 SOHCを搭載。ターボなしながら太いトルクを出し、コンパクトなボディによって絶対的な動力性能すらレガシィの2Lターボに肉薄したほど。そのほか、ハンドリングやブレーキ性能、ボディ剛性など、すべての点でレガシィより優れていた。贔屓目に見てもレガシィに勝ち目なし!
ところが、でございます。GTというのは趣味の乗り物であり、イキオイや華やかさも大切な評価項目になってくる。当時の雰囲気を思い出すと、順当な進化をしてきたBMWに対し、レガシィは元気一杯だった。しかも毎年のように小変更を加え、日本未導入だったE36ボディのツーリングを出した1995年には2代目レガシィの時代。そして1996年のマイナーチェンジで280ps+ビルシュタインを採用したGT-Bも出している。イキオイと華やかさで勝ってたね。
●挑戦の結果…BMW3シリーズツーリングが100点だとしたらレガシィツーリングワゴンは「110点」!!
(TEXT/国沢光宏)
■勝負7:NSXの開発がフェラーリを熱くした! NSX vs フェラーリ348(1990年)
この2車種、どちらも自分が乗っていたのでキッチリと評価できます。
まずはNSX。開発中にライバルとして設定されていたのは、1987年式フェラーリ328GTSであります。搭載されていたエンジンは、基本設計が1970年代序盤となる3.2L V8の最高出力270ps。足回りも1975年に登場した308の改良型である。
1980年台後半に開発をしていたNSXと比べればすべての点で旧式だ。NSXの開発チームも余裕でライバルを圧倒できると考えたことだろう。実際、NSXは328を凌駕する性能を持っていた。
しかし! NSXの開発を知ったフェラーリは、次世代モデルの開発を急がせ、NSXの発表前に348をデビューさせる。スペックだけ見ても「こいつぁ強力ですね!」。
大幅に見直されたV8エンジンは、排気量を3.4Lに拡大して300psを発生。最高速は275km/hとNSXの270km/hを超えていた。もっと重要なのがデザイン。328よりひと回りワイドになった348のボディときたら、誰が見たってスーパーカーであります。
つまり、348がデビューした瞬間、国際市場におけるNSXは終わったのであった。
しかもスポーツカーの世界は常に戦っていかなくちゃならぬ。フェラーリが根本的にサスペンションを見直し、エンジンも320psに向上させた348GTBを発売したのが1993年。
そして1994年秋には、380psを発生する3.5L 5バルブエンジンを搭載するF355へと進化していく。
いっぽう、NSXがデビュー時のV6、3Lからようやく3.2Lエンジンを得たのが1995年のこと。348が出た時点でNSXは通用しなくなり、355のデビューで“国内専用車”になってしまった。
●挑戦の結果…フェラーリ348が100点だとしたらNSXは「40点」!
(TEXT/国沢光宏)
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