王者トヨタがあえて使わない技術の理由と事情

■EV(電気自動車)

トヨタ初となる量産EVとして、2020年から中国、欧州を皮切りに、日本にも2021年初めに投入する予定のレクサス「UX300e」

 実験的にリース販売などで少量生産したものを除けば、トヨタはまだバッテリーだけで走るピュアEV車を発売していない。

 トヨタ初のEV量産車となるのは、C-HRのEV仕様とレクサスUXのEV仕様。どちらも、2020年に中国を皮切りに販売が開始される予定だ。

 これをもって「トヨタはEVで遅れをとった」という人がいるが、それはちょっと皮相的な見方と言わざるを得ない。

 EVに必須の重要技術は、バッテリー、モーター、パワーコントローラの3つ。自動車メーカーならどこでも、この3点セットを用意すればすぐEVを造ることができる。

 まして、トヨタは年間100万台以上のハイブリッド車を生産しているわけで、この電動化3点セットに関しては世界最大の量産規模を誇るメーカー。「遅れをとっている」のではなく「あえて参入を遅らせている」のは、子供にでもわかるはずだ。

 では、なぜトヨタがEVの量産化に慎重なのかといえば、ひとつには現状ではEVはどうやっても赤字が避けられないこと。もうひとつ、トヨタがEVを手がける以上ある程度の規模(最低でも年間10万台)が求められること。とりわけ後者のハードルが高い。

 赤字に関しては、1台あたり50万円の損失で10万台なら500億円だから、トヨタにとって許容できない金額ではない。しかし、10万台分のEV用バッテリーの調達ははるかに難関だ。

 50系プリウスが搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は0.8kWhだが、ピュアEVでは最低でもその50倍の容量が必須。つまり、EVを10万台造るには、プリウス500万台分の電池を調達しなければならない。

 従来からのパナソニックに加えて、中国BYDやCATLなど、新たなバッテリーのサプライチェーンが構築できたことでようやくトヨタのEV量産にゴーサインが出た。それが、トヨタがEV参入に慎重だった最大の理由と言えるでしょう。

【画像ギャラリー】欧州メーカーも白旗を上げたトヨタ自慢の技術「THS」を搭載した現行モデルたち

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