環境のためとはいえ、世界の自動車メーカーが頭を悩ませるCAFE(企業平均燃費)。2025年からはヨーロッパのCAFE基準がいっそう厳しい数値となった。日本の自動車メーカー各社はどう対応していくのか? 国沢光宏氏が考察する。
※本稿は2025年2月のものです
文:国沢光宏/写真:トヨタ、スズキ、日産、マツダ ほか
初出:『ベストカー』2025年3月26日号
2025年より欧州CAFEがいっそう厳しく
あまり取り上げられない話題ながら、2025年から欧州CAFE(企業平均燃費)が一段厳しい数値になった。
これまで二酸化炭素の排出量でNEDCモードの95g/kmだったのが、実燃費に近いWLTPモードで93.6g/kmという内容。NEDCを100とした時のWLTPは78に相当する。つまりWLTPで約30km/Lを目指さないとクリアできないということになります。
ちなみにプリウスで最も燃費のいい1800ccモデルのWLTCは32.6km/L。2000ccだと28.6km/Lで達成できない。
ヤリスが35.8km/L。ただ20.3km/LのRAV4を売ると平均燃費は大幅に落ちてしまう。NEDC時代ならCAFEを余裕でクリアできていたトヨタですら、二酸化炭素排出のペナルティ(基準を1g超える毎に95ユーロの違反金)を払わなくちゃならない可能性が出てきた。
また、ユーロNCAPは電気自動車比率も求められている。トヨタの場合、122万台(2024年のEU販売倍数)の10%程度を電気自動車にしなければCAFEのクリアが難しい。
もちろん厳しいのはトヨタだけではないものの(VWやフォードなどトヨタより悪いメーカーもある)、皆さん電気自動車の販売比率が高い。VWでトヨタの5倍。フォードですら2.5倍も売ってます。
したがってトヨタでいえば、販売する車種をすべてハイブリッドにしたうえで、電気自動車を12万台くらい売る必要がある。クリアできるのか?
調べてみると興味深い。トヨタ製の電気自動車の販売を上乗せさせるだけでなく、2025年中にスズキからインド製電気自動車のeビターラを供給してもらうという。それも少なからぬ台数らしい。
電気自動車で出遅れているといわれるトヨタながら、キッチリ準備をしているということです。
さらに2026年くらいからトヨタ開発の電気自動車も生産を開始するだろうから、遠からず目標達成ということになりそう。今や欧州市場における日本勢はトヨタのひとり勝ち状態。燃費のいいハイブリッドを武器に、一段と売れゆきを伸ばすと思う。
トヨタ以外の日本勢はどうか? 電気自動車を作るしかないのだけれど、なかなか難しい。
マツダの場合、中国からマツダ6eを持ってくると発表したが、EUは中国生産車に対し関税の上乗せを始める。価格競争力でどうか?
日産もルノーから供給を受ける計画らしいが、ここにきて難しくなりつつあるらしい。ホンダはホンダeで失敗しており、次の手が見えてこない。欧州のCAFE規制、けっこう手強いです。
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コメント
コメントの使い方トヨタいじめで始めたような欧州CAFEが、達成できそうなのはトヨタだけという笑い話でしょうか。ゴールポストを大きく動かすと思いますよ。