■エンジンはスバル伝統のEJ20ターボ
搭載エンジンはスバル伝統の水平対向2LターボであるEJ20型エンジンが採用された。そのスペックは最高出力340ps、最大トルク47.0kgmを誇り、新たに6速シーケンシャルギアボックスを採用しているのもポイントだ。
北米仕様の新型WRX STIには6速MTを採用しているが、辰巳氏によれば「欧州人ドライバーのふたりが慣れない右ハンドル仕様のマシンでこれまで戦ってきたので、その疲労と危険度を軽減するためにシーケンシャルを採用した」とのこと。
A20直噴ターボのDITではなく、伝統のEJ20ターボが選ばれたのは、STIのニュルチャレンジがレースの勝敗を求められるだけでなく、レースでの成果を常に市販車に反映させることが求められるからだ。このため、歴代STI参戦マシンは可能なかぎり市販車のパワーユニットを使ってきた。
辰巳氏も「EJは過去のエンジンと思われているかしれないが、そうではない。確かにFA/FB型は燃費もいいし、性能バランスもいい。しかし、今なおスバル最高のパフォーマンスを持つエンジンであるEJがレースにはベストだ」と語る。
ただし、ベースマシンが新型WRX STIに切り替わった今回、例年以上に技術的な制約があったという。
STIパワーユニット技術部の森田順一氏によれば、「新型WRX STIのエンジンルームは新世代エンジンのFA/FB型に合わせて前後方向のスペースがこれまでのWRX STIに比べてコンパクトになっているんです。また、車体開発チームからレース車の重心をもっと下げたいという要望があり、吸排気系や補器関系を大きく変更しました。
具体的にはインタークーラーを起こし気味に搭載してインマニを新設計し、エキマニの取り回しを一新しています。オイルパンも新設計にしたことでエンジン搭載位置を変えずに車高を下げることができました」とのこと。
STIの場合、レースマシン開発は辰巳氏主導のもとでほとんどの作業が実施され、ドライバーはマシンが最終的に完成形に近づいた段階で調整に加わる珍しいスタイルを取る。
これは辰巳氏がスバル時代に車両開発を担当した経験が大きいのだが、ふたりの日本人ドライバーの要望を把握していたこともその要因のひとつだそう。このため、まだ発売されていない市販車をベースにした短期間でのマシン開発が可能になったという。
さて、今回のシェイクダウンではいきなり昨年型の参戦マシンによるタイムを更新したそうだが、それだけに市販車の新型WRX STIのポテンシャルの高さを伺わせる。
米国仕様では素のWRXが2L・DIT直噴ターボ(268ps/35.7kgm)、WRX STIがEJ25型2.5Lターボ(305ps/40.1kgm)を搭載するが、日本仕様はどうやらEJ20ターボを採用することになりそうだ。
気になるエンジンスペックは、現行WRX STIが308ps/43.0kgmのEJ20ターボで、同Aラインが300ps/35.7kgmのEJ25ターボを搭載していることから、新型はSTIコンプリートカーであるS206と同等の320ps/44.0kgmを発揮するとみられる。
発売時期はノーマルのWRX発売から遅れて今年8~9月頃で、予想価格は380万~400万円。大いに期待してその衝撃的なデビューを待ちたい!
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