SDGs・カーボンニュートラルへの取り組み推進のため、2025年1月トヨタブランドの車両紙カタログ製作と印刷が終了した。トヨタの店舗では、スマートカタログ(スマカタ)による商談が、早いところでは昨年春ごろからスタートしている。冊子からタブレットへと変わったカタログの仕様。実際の商談にはどのような影響が出ているのだろうか。現場の様子を見ていこう。
文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(トビラ写真=Anastasiya)
車両比較は非常にやりやすくなった
トヨタディーラーで新車の商談を行うと、営業マンはかなり大きめのタブレットを抱えてくる。これでスマートカタログを見るというわけ。スマートフォンが当たり前になり、タブレットでのやり取りもさほど珍しいものではなくなった昨今では、これも時代の流れなのだろうなと感じる程度だろう。
筆者も、昨年秋にスマカタでの本気の商談を経験したが、紙カタログと比較して便利になったなと思う部分は、車両比較の部分だ。
例えばシエンタとノア、どっちにしようか迷っているといった時に、各車両の情報を1画面の中に並べることができる。数値の比較等々がやりやすく、ここは購入車種に迷いがある時に良いと思った部分だ。
さらにオプション装備や安全装備など、馴染みのない装備や用語に対して、スマカタ上で詳細説明を見ることができるのも良い点。特に先進安全装備では動画を交えて説明が入るため、文字列だけの説明よりも視覚的な訴えが多く、理解もしやすい。
営業マン側も、思い違いによる誤った説明などが無くなり、商談がスムーズに進むだろう。
一方で、カタログとしての見づらさは残ってしまうのがスマカタ。
紙の場合は「この辺にコレが書いてあったな」とか「ココを聞きたい」という場所を、付箋なりドッグイヤーなりですぐに提示することができたが、スマカタだと「アレはどのへんだったかな?」と情報の在り処が分からなくなってしまう。
画面上を行ったり来たりすることが何度もあり、商談に時間がかかるという印象も受けた。
スマカタを使った商談には予習が必須
スマカタでの商談は、なにぶん情報量が多すぎる。これまでのように、その場でカタログをもらって、大体で見積もりを作ってもらい、ハイ注文というわけにはいかなくなった。
特にメーカーオプションがパッケージ化や複数オプションのセット化がされている車種では、どれが必要で、今どれが付いているのかといったことが、タブレット画面1枚では本当に分かりにくいのだ。
そこでスマカタを使った商談をこれから控えているという方は、必ずパソコンなどの大きな画面で、一度購入希望車種の電子カタログを見て、グレード・オプションだけでも予習をしておくことをおススメする。
特に機能の多いミニバンの商談をする場合は、この予習がスムーズな商談のカギを握るといってもいい。
改善ポイントはメモ!!
商談中に気になった部分や、重要なポイントについてはスマカタ上で「注釈」機能を使い、画面上へ直接メモをしたり、印をつけたりすることができる。印をつけた画面は、ユーザーのスマホなどへ送ることができ、商談中や商談後に共有することが可能だ。
ただこの機能、商談中に営業マン側のタブレットでの操作で行うもの。事前にユーザーが予習をする中でのメモを、電子カタログ上に残しておくことはできないし、ユーザー側のメモを営業マン側へ送ることもできない。
注釈機能は分かり安くていいのだが、お店からユーザーへの一方通行では不十分。ユーザーのPCやタブレットで見た電子カタログに、ユーザーが自由にメモを書き込む機能と、そのメモが入ったオリジナル電子カタログを、営業マンが商談時にQRコードで読み込むくらいの機能は欲しいもの。
紙カタログ時代は当たり前にできたカタログへのメモが、電子になって出来なくなるのはかなり困った。実際にスマカタで商談してみて、最も困ったのはメモが取れないことと、共有できないこと。ここを早急に解決してほしい。
時代の流れとして、スマカタへ移行するのはやむを得ないだろう。ただ、紙や冊子で出来ていたことは、スマカタでも出来てほしい。
「こんなものだろう」で止めることなく、商談時に気づいたことは常に声に出していくこと。それが、紙よりスマカタの方が良いよねと、100人中100人が言い切れる、そんなカタログを作り上げていく道になる。カタログの電子化はまだまだ道半ば。
様々な声を集約しながら、より質の高いスマカタへと成長してほしいものだ。



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