トヨタと言えば国産車の代名詞的存在だが、トヨタエンブレムを付けたクルマの中には、海外から逆輸入されてきたクルマも結構ある。北米や欧州で活躍していたクルマが日本に来て、どのように受け入れられたのだろうか。国内トヨタが販売していた、逆輸入車を紹介していこう。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ
【画像ギャラリー】海外産トヨタも結構イケてます! アバロン・アベンシス・ヴォルツの海外組三銃士!(32枚)画像ギャラリーセルシオよりも広い室内! アバロンが快適セダンのキングかもよ
1994年に北米でデビューし、国内には1995年の5月に導入されたアバロン。北米ではカムリの上級車種として位置づけられる、FFの4ドアセダンだ。
エクステリアは北米市場を意識した曲線基調のボディラインで、風切り音の低減を念頭に開発されたボディは、Cd値0.32を実現する。室内はベースとなったカムリよりも100mmホイールベースが拡大され、後席や荷室のスペースは非常に広かった。
当時、アバロンのライバルとなったのはセフィーロやディアマンテだが、室内の広さはライバルに大きな差をつけている。さらにトヨタのフラッグシップであった初代セルシオよりも室内が広く、身長190cmを超える人が乗っても余裕があったほど。さすが北米サイズのセダンである。
ドアが閉まる音にまでこだわったトヨタの欧州モデル
2003年に登場したのが、欧州向けのミディアムサイズセダン・ワゴンのアベンシスだ。優れた走行性能や最高レベルを獲得した安全性能を掲げながら、高い品質と完成度で国内モデルを驚かせた1台である。
欧州でデザインされたスタイルは非常に新鮮で、ドアが閉まる音にまでこだわった高い質感は、欧州仕様ならでは。輸入車メーカーの同サイズモデルと比較して割安だったことから、トヨタの逆輸入モデルとしては販売が好調だったのも特徴的だ。
2代目モデルは2009年に登場する。イギリスのTMUK工場で生産され、日本向けにはステーションワゴンだけが導入された。
初代比で全長・全幅を50mm延長し、前後トレッドが広がったことで乗り味が大きく向上している。室内は全体的にシンプルな作りだが、センタークラスターなどにチタン調パネルを奢り、本革ステアリングやシフトノブを採用するなど、クラスを超えた装備が室内を彩る。また、右ハンドルでも英国仕様のまま左ウィンカー・右ワイパーの、輸入車レイアウトになっていたのも特徴的だった。
ブレーキは鳴くし、ブレーキパッドの減りが早くホイールも真っ黒になるクルマだったが、そこも含めて欧州車。国内トヨタ車のつもりで買うと痛い目をみるものの、本気の欧州車をトヨタ品質で買えるとあって、ミドルレンジ以上のワゴンを求めるユーザーにとっては、非常に貴重な存在となっていた。
北米生まれはキャラクターの濃いクルマが盛りだくさん
2002年にトヨタとGMが共同で企画開発を進めた新感覚SUVがヴォルツである。トヨタ×GMと言えば、伝説のキャバリエが思い浮かぶが、ヴォルツもなかなか記憶に残るクルマだった。
全長は4365mmとコンパクトカー並みなのだが、全幅が1775mm、前後トレッドは1500mmを超えるワイドトレッド。ホイールベースは2600mmと眺めで、室内高は1305mmとミニバン並みだったのである。
小さいのか大きいのかカテゴライズが分かりにくく、当時のユーザーからは敬遠されたものの、令和のコンパクトSUVたちは、みんなヴォルツのようなサイズ感なことから、各所で先取りに先取りを重ねたクルマだったことが分かる。あと20年販売が遅ければ、大ヒットだっただろう。
また、北米向けではこちらも忘れてはいけないのが、1992年登場のセプターだ。国内モデルにはない、本格的な大型ステーションワゴンである。FFの利点を生かした十分な広さのキャビンを持ち、ラゲッジルームの床に格納できる3列目エクストラシートを採用して、乗車定員は7名だった。
北米や欧州仕様の各モデルは、少々販売面に難はあったが、特徴だらけのクルマである。海外市場で揉まれて母国凱旋を果たした名車たちは、私たちに海外の文化を教えてくれていた。
海外生産・海外販売のトヨタ車を国内で販売する流れはめっきりと減っている。新しい風を国内市場に吹かせたいなら、面白い海外モデルを国内に期限付きで導入するのも面白そうだ。



































コメント
コメントの使い方