キューブキュービックは名車だったのではないか?

3列目シートは劣悪環境だったが、「存在すること」が正義だった?

 ただし3列目は、緊急時の使用ですら我慢できないほど窮屈なシートで、膝が2列目の後ろに常についてしまうような有様。

 おそらく、殆どの人が3列目を折りたたんだまま使用していたであろう。3列目に座るには、2列目も最前へずらさねばならず、そのため、2列目も膝がつっかえる状況であった。

キューブキュービック 車内
キューブキュービック 車内

 「そんなことなら、ホイールベースをもっと伸ばせばよかったじゃないか」と思うかもしれない。

 筆者の予想ではあるが、ホイールベースをもっと伸ばすことはできただろうが、完璧なまでに完成された(と日産が認識した)「四角いデザイン」の2代目キューブから、縦横比といったデザインバランスを、崩したくなかったのではないだろうか。

 当時の日産は、中村史郎氏を先頭にデザイン改革の真っ最中だ。

2代目キューブと同時期に発売された3代目マーチ<br>2002年グッドデザイン賞受賞
2代目キューブと同時期に発売された3代目マーチ
2002年グッドデザイン賞受賞

 もしキューブキュービックがホイールベースをあと100ミリ伸ばして2700ミリ(シエンタが2700ミリ、モビリオが2740ミリ)まで伸ばしていたら、もうちょっと売れていたかもしれない。

 しかし、あのデザインバランスを保つためには、キューブキュービックの伸ばし具合が、ぎりぎりだったのだろう。

 決して悪いことではないのだが、日産デザイナー達の強いこだわりが働いたと考えられる。

 それでも日産は、「3列シートのコンパクトミニバン」を作りたかった。キューブの3列シート車です! とカタログに書きたかったのだ。

 どんなに窮屈だったとしても、キューブキュービックには「3列目があることに」意味があったのだ。

どうして今、日産は3列シートのコンパクトミニバンを作らないのか?

 キューブキュービックではなくても、3列シートのコンパクトミニバンをラインアップに加えればよく、日産も、需要のある有望ジャンルに割って入るくらいは、今でもできるであろう。

 しかし日産はこの20年間、海外で需要がないクルマはつくろうとしない。

まとめ

 キューブキュービックは「名車」というよりも「迷車」だったが、それが分かりつつもブラッシュアップをせず、3代目キューブではモデルを消滅させて「迷車」のままで居続けさせたのは自身であると、日産は認識すべきだ。

 筆者は、キューブこそが日産を救う救世主になると考えている。世界中を見渡してもあれほど仕上がった「四角いクルマ」はないと思う。

e-POWERを搭載している日産ノート<br>2018年販売台数1位
e-POWERを搭載している日産ノート
2018年販売台数1位

 もしそのキューブに、e-POWERが搭載されていたら? もしくはEV化されていたら? プロパイロットが搭載されていたら? 今流行のSUV風「キューブクロス(仮)」があったら? 

 デザイン、安全装備、燃費、明確なキャラクタを磨き、今でも「キューブ」ブランドを大事に育てていれば、今ごろ確固たる地位を築いていたかもしれない。

【画像ギャラリー】キューブらグッドデザイン賞を受賞した日産車たち

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