なんで1.3とか1.8とかの排気量があるの? 税金に合わせて0.5刻みにすればラクじゃないの?

なんで1.3とか1.8とかの排気量があるの? 税金に合わせて0.5刻みにすればラクじゃないの?

 日本の自動車税(種別割)は、総排気量によって税金が変わってくる。この税区分はお役人が決めたもので、たぶん自動車税の区分を作った人は、クルマのエンジンが何たるかなどは全く知らないで制度を作ったのだろう。世に出るクルマのエンジン排気量は、税区分のように0.5刻みにはなってない。そこには税負担よりももっと重い、技術者の魂が宿っていた。

文:佐々木 亘/画像:トヨタ、スバル、ホンダ、ベストカーWeb編集部ほか

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キーワードは1気筒400cc

400ccといえば中型バイクを連想するが、バイクエンジン流用のN360は意外にも400ccではない。流用先も空冷並列2気筒のドリームCB450
400ccといえば中型バイクを連想するが、バイクエンジン流用のN360は意外にも400ccではない。流用先も空冷並列2気筒のドリームCB450

 エンジンを作り上げる時、最も効率のいいモノを作り上げるのがエンジニアの魂だ。この効率を突き詰めていくと、エンジン1気筒に対して与える排気量が400ccであることにたどり着くという。

 つまり、2気筒エンジンなら800cc、3気筒なら1.2L、4気筒なら1.6という具合だ。スポーツモデルの名車が、これらの排気量をよく選んでいる。

 通称ヨタハチのトヨタ・スポーツ800は2気筒800cc、火の玉ボーイで有名なスバル・ジャスティは3気筒の1.2Lだし、ハチロクでお馴染みのトヨタ・スプリンタートレノ/レビンは4気筒1.6Lエンジンだ。

 名だたるスポーツカーが、気筒数×400ccのエンジンを載せていることから、この仕様の効率の良さがうかがい知れる。

 ちなみに1気筒あたり400ccという数字は、キャブレターでガソリンと空気の混合気を作っていた時代のものだ。現在ではインジェクションになり、燃料噴射技術やコンピューター制御が向上しているから、ズバリ1気筒を400ccに割り当てる必要は無いという。

 ガソリンエンジンの理想的な1気筒あたりの排気量は、約400ccから600ccだ。

1.8Lは燃費のためのスペシャル設定

2代目の1500ccから300ccアップの1.8はプリウスに適した排気量だった!?
2代目の1500ccから300ccアップの1.8はプリウスに適した排気量だった!?

 トヨタのハイブリッドモデルでよく使われる1.8Lエンジンも、排気量としては中途半端に見えるが、ここにも技術者の熱い思いが込められていた。

 1.8Lハイブリッドが使用されるようになったのは、3代目プリウスから。プリウスを3代目へフルモデルチェンジする際に、2代目が背負っていたネガが「高速実用燃費の悪化」だった。これを解決するために、トヨタが出した回答がプラス300ccなのだ。

 気筒数を変えることなく排気量を引き上げると、シリンダーあたりのS/V比(燃焼室面積/燃焼室容積)が低くなり、外に奪われる熱が小さくなって冷却損失が少なくなる。

 一般的なクルマでこれをやると、トルクは増えるが軽負荷(走り出しの低回転域)での効率が悪くなるため燃費が落ちるのだが、プリウスは発進時にEV走行をしているので軽負荷部分はほとんど使わない。プラス300cc分の出力向上は、ほとんどネガを受けずに高速クルージング時のエンジン回転数を低く抑え、高速実用燃費を向上させることに繋がっているというわけだ。

 日本が世界に誇るハイブリッド技術にも、0.5では割り切れないこだわりの排気量が設定されている。

排気量での税負担はそろそろやめた方が良いのでは?

HEVやBEVが当たり前になっている昨今。排気量で税金を決めるのはナンセンスなのでは? 
HEVやBEVが当たり前になっている昨今。排気量で税金を決めるのはナンセンスなのでは? 

 様々な技術のこだわりを目の当たりにすると、日本の自動車税がいかに適当な尺度で決められたものかがよくわかる。中途半端だったのは、エンジン排気量ではなく自動車税の排気量区分だった。

純ガソリンエンジンばかりだった四半世紀前と比べて、現在はHEVが当たり前になっているし、BEVも増えている。エンジンの無いBEVの自動車税区分は、排気量1.0L以下と同じというよく分からないものになっているし、いっそのこと技術を理解していない排気量区分よりも、CO2排出量などで税額区分を作ってくれた方が良いのではないだろうか。

 技術者の皆さんは、税制などにとらわれない自由な発想で、これからもエンジンの開発に注力してください。素晴らしい日本の技術で、再び世界を驚かせてやりましょう。

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