ヤマハ発動機が今後の二輪車の電動化について方針を示したことで注目される「バイク・スクーターの電動化」。クルマの電動化とはずいぶん異なった方向性になると、国沢光宏氏は考えているようだ。国内二輪メーカーはどう動くのか!?
※本稿は2025年5月のものです
文:国沢光宏/写真:ヤマハ、ホンダ
初出:『ベストカー』2025年6月10日号
ヤマハ&ホンダに見る「二輪車の電動化」
ヤマハ発動機が今後3年間に投入する新型2輪車20車種のうち、約3割を電動化する方針を示した。
確かに2輪もカーボンニュートラルに向かわなければならない。一方、東南アジアに代表される「働く2輪市場」を除き、大型2輪の大半が趣味の乗り物。電気じゃなくエンジンのサウンドや振動、加速感などを好む人は多いと思う。果たして2輪の電動化って、どうなるだろう?
この件、2年くらい前からさまざまな考察をしてきたけれど、高価格帯から電動化の普及が始まった4輪車とずいぶん違う方向性になると考える。
ベトナム・インドネシア・マレーシアは自国開発&生産!?
まず電動化に向かって動き始めているのが前述の「働く2輪」だ。そもそも電気とガソリンの価格を比べると、圧倒的に電気は安い。なんせ日本より平均年収の少ない国でもガソリン価格は日本と大差ない。ベトナムあたりだとリッター300円以上のイメージ。
同じ距離を電気で走らせたら4分の1くらいのコストで済む。エネルギーとして考えたら電気は圧倒的に安い。そんなことから新興国の多くが電気バイクの自国開発&生産を奨励している。
すでにベトナムをはじめ、インドネシア、マレーシアは自国の電気バイク産業を立ち上げた。
こうなると困るのが日本勢。なかでもホンダは全収益の3分の1程度を2輪事業で得ている。
そればかりかベトナムの2輪だけでホンダの全収益の10%近い年だってあるほど。新興国の2輪シェアを奪われたら安定した収益源を失うことになる。
問われる国内2大メーカー
ホンダなど猛急で電動化を進めるべきなのだろうが、少しばかり出遅れている気がします。2輪業界におけるホンダのシェアは3分の1に達し、4輪業界のトヨタを相手にしない。本来ならトヨタのような横綱相撲ができるはず。
ヤマハはどうか? ホンダと違い新興国のシェアという点で低い。全体のシェアも9%程度。つまり趣味性の高い大型バイクをメインにしている。となれば電気バイクを作っても業績に貢献しないように思える。
つまりホンダはもっと電動化を進めるべきだし、ヤマハは慎重でいい。今のところ、そうなっていない。どちらの選択が正しいのか5年後にわかることだろう。
参考までに書いておくと新興国の電動化は予想以上に早いと私は思っている。
電気自動車にもいえることながら、政府の後押しと、日本より緩い安全規定を容認すれば電動化は驚くほどリーズナブルであり、エンジン開発より短期間で進む。だからこそ日本勢は中国に出し抜かれた。2輪も4輪の失敗を繰り返さないよう、祈りたい。
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