高速安定性と旋回性能の高さに驚く
驚かされたのは直進安定性の高さ。高速域でも風切り音はほとんどなく、ボディ全体が空気を切り裂くように滑らかに進んでいく。高速レーンチェンジでも怖さは皆無で、まるでレールの上を走っているかのよう。
そして旋回性能。ロングノーズ&ショートデッキのスタイルからは想像できないほど軽快に曲がる。
フロントに搭載されたエンジンは、車体中央寄りにレイアウトされ、理想的な前後重量配分51:49を実現。
軽量・高剛性なアルミ製ダブルウィッシュボーンサスペンションが路面をしっかり捉え、低速コーナーから高速コーナーまで死角がない。ステアリングを切り込む角度に対して素直にタイヤがグリップしてくれるから安心してコーナーに飛び込んでいける。
さらに高速域でも挙動が安定しており、アクセルを踏み込む量に正確にトラクションがかかる。これぞ世界最高峰のカテゴリーで培ったマクラーレンの真骨頂だ。
ブレーキ性能も一級品
1.8tもの車重を受け止めるブレーキは、ブレンボ製のフロント6ポッド&リア4ポッドキャリパーとカーボンセラミックディスクの組み合わせ。さらにAMG独自のブレーキ・バイ・ワイヤシステムも備わり、制動力は申し分ない。
現代の最新スーパーカーと比べるとやや見劣りする面もあるが、フルブレーキングでも4輪がしっかりと仕事をしている感覚が伝わってくる。
優れた血統と進化の系譜
SLRマクラーレンは2003年の正式発表から2009年の生産終了までに2153台を製造。
さらにオープン仕様のロードスター、強化サス&専用エアロを備えた722エディション、その限定モデル722Sロードスター(150台)、そしてワンメイクレース用の722GT、極めつきはSLRオーナー限定で販売された「スターリング・モス・エディション(75台限定)」まで登場。
ここまで多彩なバリエーションを派生させることができたのは、ベースとなるSLRがそれだけ完成された性能を有していた証ということだろう。
F155型エンジン解説
F155型はSLRマクラーレン用にAMGがチューニングを施し開発されたスペシャルエンジン。排気量5438ccV型8気筒にスーパーチャージャー+インタークーラーを装備。90°バンクのエンジンの両サイドには、それぞれに1機ずつスーパーチャージャーを備え、最高出力626psを発生。
メルセデスは高回転まで回してパワーを発生させるのではなくトルクで瞬発力を得るのが伝統で、ターボと違いフラットで力強い加速感が魅力だ。
600psオーバーでも停止状態からアクセルを踏み込んでも扱いやすいのはスーパーチャージャーの特性。フロントノーズがとても長いが、エンジン本体は可能な限りコックピットに近くに搭載しフロントミドシップを謳った。


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