日本の「定年制」が中国への人材流出に繋がる!?
ベストカー:自動運転は非常にいい例ですが、それ以外の中国の脅威を伺えますか?
鈴木:よく考えると中国は中国国内だけで成立する3000万台超という市場があるだけに、日本のようにというかアメリカ同様にというか、積極的に自国外に出る必要がとりあえずないのも事実。
それを踏まえたうえで、BYDのBEVだって日本で絶対的には安くないのを見たりしていると、短期的には日本人にとって中国車の脅威というのは少ないのかなと。BYDのプラグインハイブリッドや日本に投入するという軽自動車が激安だったりすると、その状況が一気に変わるかもしれないけどね。
国沢:クルマ自体だけでなく技術も含めて、中国車は電池ひとつ見ても、リン酸鉄リチウムイオン電池は定評あるし、さらに安いナトリウム電池も今後出てくると、BEVはエンジン車より安いことが当たり前のようになると思う。
そうなると、飛行機がプロペラ機からジェット機に代わったように、クルマがエンジン車からBEVに移行するのは普通の流れでしょう。
自動運転だって、自動運転として見たらクルマにお任せは危ないかもしれないけど、日本のように運転支援と考えれば高性能なのは事実だから、やっぱり中国は脅威ですよ。
渡辺:中国メーカーの急成長には日本の雇用体系も影響してるんじゃない。特に自動車産業は「60歳で定年、再雇用は給料が大幅に下がる」なんてことは止めるべきかと。この制度で優秀な人材が海外に流出するのが一番もったいないし、脅威を自分で与えているようなものですよね。
ベストカー:定年後に中国に行った開発者もいますしね。
国沢:60歳を超えても、能力のある人にはぜひ日本に残って働いてもらうべき。
渡辺:あとは中国の「何かあったらあとから考える」というやり方で技術を磨いているのは脅威ですから、もう日本も国際競争力確保のために制度改正や対策が必要。
もうひとつは日本は乗用車メーカーが8社もあるんだから、オールジャパンで動くことで、例えばバッテリーやBEV用プラットフォームを作って共用するといったことも必要なんじゃないですか。
鈴木:自動運転もBEVも主導権は握れないけど、「デファクトスタンダード(標準的な規格)が決まったら、それを買って組み合わせる」っていうパソコンとかスマホみたいなビジネスをするという手も、メーカーのポジションなどによってはありかと思う。
国沢:まあそれだとクルマの趣味性とか面白みはゼロになるけどね。
鈴木:それとクルマのレギュレーションは世界で統一される方向かと思っていたけど、中国はもしかするとこの先20年か30年独自の経済圏を築いて、中国独自のクルマのレギュレーションを作って、自国以外のクルマを受け入れないというシナリオも、あるのかもしれない。
ベストカー:統一規格を採用するクルマが増えると、メーカー独自の技術が減って競争力が弱まりそうです。そうなると今後、自動車メーカーは世界的に減っていきそうですが?
鈴木:中国だって今後3年くらいで50社くらいは淘汰されるって言われてるんだから、世界的に減るでしょう。
また、中国が独自の経済圏を築くようになると、結局は日本車もbZ3XやN7のような中国で開発したクルマでないと勝負できないんじゃないかな。逆にというか同様にというか、中国が中国開発のクルマを欧米に売るというのも難しいのかもしれない。
国沢:クルマの世界需要が約9000万台なのに対し、日本が現在25%のシェアを持っているというのは奇跡的なこと。これをキープするにはまず日本が世界から嫌われないことが第一かな。とにかく世界から日本が尊敬される存在になることが大事で、このことは国民みんなで熟考する必要があるだろうね。
日本はなんだかんだで中国、アメリカに続いて世界3位とか4位くらいの存在感がある国なんだから、とにかく世界から好かれる人種になるべき。そういうことが世界中で日本車が愛されるようになるのにつながると思う。
鈴木:調子にのると嫌われるからね。「名を捨てて、実を取る」みたいな態度をとるのも必要(笑)。
渡辺:必要なのは、日本車メーカーは初代クラウンから左ハンドルをアメリカに輸出していたように、輸出先を含め相手が求めるものを提供するという姿勢でしょうね。
それと各国の市場に関しては、自動車産業が発展している世の中ですから、国沢さんが関税の話の時に地産地消と言われたように、開発&生産から廃棄&リサイクルまで地産地消とするのが最終的に理想なんじゃないかと。
鈴木:まあそもそも自国に自動車メーカーがない国のほうが多いなか、日本はこれだけ自動車メーカーがあるっていうのは幸せなことだしね。


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