いまや世界一の自動車輸出国であり、世界最大のBEV生産国である中国。日本市場にも上陸を果たし、手を出しやすい価格と、価格以上の上質さで消費者を驚かせている。今後、日本メーカーは中国車とどう立ち向かえばいいのだろうか!?
※本稿は2025年6月のものです
文:国沢光宏、鈴木直也、渡辺陽一郎/協力:永田恵一/写真:トヨタ、日産、BYD ほか
初出:『ベストカー』2025年7月10日号
中国車「自動運転」の脅威
2023年に日本を抜いて世界1位の自動車輸出国となり、今では世界最大のBEV(電気自動車)生産国にもなっているなど自動車業界に広がる中国の脅威。その中国メーカーに日本メーカーはどう戦っていくべきか? 3人の見解は……。
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鈴木:中国の脅威として挙げられるいい例が自動運転だと思う。日本をはじめとした先進国って事故が怖くて自動運転の実験ってなかなか進まない。一方、中国って大きな都市の市街地で自動運転タクシーの実験をやっている。
ベストカー:安全重視で慎重に進めている日本とは大きく違うのでしょうね。
鈴木:もう別世界なわけ。そのバックグラウンドとして、日本はADASっていうと「運転支援」だけど、中国人にとっては「なんちゃって自動運転」。すなわち、ハンズオフでA地点からB地点まで、いかに長い距離を走れるかを競うことが開発の焦点になっている。
ベストカー:中国は自動運転技術が急速に進んでいそうです。
鈴木:日本もそのなかでトヨタのbZ3Xや日産のN7は、自動運転で一番進んでいるといわれている中国ベンチャー「モメンタ」のソフトウェアを使って、中国勢に悪くない勝負をしている。だけど、中国の場合は、市販車の自動運転と無人自動運転タクシーの技術にリアルなつながりを感じるから凄い。
渡辺:中国ではドライバーのいないレベル4の自動運転タクシーが走り始めているよね。
国沢:中国はAI(人工知能)が驚くくらい進んでいる。一方で、日本は自動運転をプログラムで開発していたから、複雑になるほどプロセッサーに使う電力量が増える。
するとBEVやFCEVの航続距離が短くなったり、周囲の情報収集にライダー(LiDAR、高感度センサー)が必要になったり、まずハードウェアへのコストをはじめとした負担が大きい。対するAIを使う中国勢はライダーを使っても電力消費は多くないので航続距離への影響は少ない。開発実験もしやすいよ。
鈴木:もちろん実験をはじめ、国情が違うという点は確かに非常に大きい。
国沢:それに対し日本人は「中国は中国共産党だから実験ができる」って簡単に言うけど、中国メーカーは自動運転機能にバグが出ればすぐに改良し、その繰り返しで開発を進める。
だから、「自動運転車でまた事故か」などとバカにしているうちに、中国の自動運転は完成してしまうんじゃないかと。
それに対し、日本ではオリンピック選手村のeパレットによる事故を筆頭に、自動運転絡みでの事故に対する責任問題がややこしいことになっていたりする。これじゃ自動運転の技術が進むわけがない。
鈴木:中国共産党といえば面白い話があって、2025年4月下旬に開催された上海モーターショーの少し前に、シャオミの自動運転車が大事故を起こしたのだけど、モーターショーではハンズオフをはじめとした自動運転類のアピールを控えていた。中国共産党がコントロールしたんだろうね。
今回上海へ行って、逆にそのくらいダイナミックな国じゃないと自動運転なんて無理だろうなって痛感した。
国沢:だから日本が自動運転をモノにするには中国でモメンタみたいな企業と組んで技術を磨くしかない。だからトヨタや日産のように中国の技術を活用してないメーカーは厳しい。


















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