いつものように後席を倒し、フルフラットにしたラゲッジでゴロリと横になるテリーさん。まさかそんなことを考えていたなんて……。テリーさんを少年時代へと引き戻したロボット顔の秘密基地・トヨタ クラウンエステートはどんなクルマ!?
※本稿は2025年6月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、トヨタ
初出:『ベストカー』2025年7月26日号
フラットにしたラゲッジルームは大人の秘密基地!
後席を倒し、ラゲッジをフルフラットにして寝転んでいると、撮影中であることを忘れて「ここから出たくない!」と駄々をこねそうになった。
少年時代、築地の実家には両親と兄弟4人のほか、住み込みで働く人たちが10人ほどいて、私は押し入れを改造して寝ていた。狭くても自分だけの城。クラウンエステートのラゲッジにいると、あの頃の楽しさが思い出される。
ヨーロッパの家には屋根裏部屋があることが多い。日本の住宅でいえばロフトだろうか。どちらも限られたスペースを有効に使うアイデアだが、その絶妙な狭さが嬉しいのだ。
ワクワクさせるラゲッジルームがイイ!
クラウンエステートのラゲッジルームに居ると、そんな「自分の城」感覚が楽しめる。もちろん、車中泊もできそうなくらいのスペースがあって狭いわけではないが、「秘密基地」のような楽しさがあるのだ。
今、クルマで味わえる一番の贅沢は「座り心地のいいシートにゆったり座って、優雅に過ごす」というものではないはずだ。高級車に乗っている人は、自宅でそういう時間を過ごしている。逆に、車内ではテント生活のような感覚が非日常で楽しいはずなのだ。
私はこの連載で新型車に試乗するたびに、ラゲッジルームの広さや床がフラットになるかなどをチェックしている。続けているうちに、ラゲッジルームを見ると反射的に寝転ぶようになってしまった(笑)。
そうしているうちに、ラゲッジルームの広さや使いやすさが身体を通じてわかるようになってきたのだが、クラウンエステートが国産トップレベルなのは間違いない。
ワゴンやSUVのラゲッジルームは、後席を倒した時にフルフラットになってほしい、いや、なるべきだ。寝転ぶたびに言っていたことだが、ようやくその思いがトヨタにも通じたのだろうか。
現実的には、クラウンエステートで車中泊する人はほとんどいないかもしれないが、「やろうと思えばできる」のが大事。それが人をワクワクさせるのである。
ロボットのような顔つきが新しい!
ラゲッジルーム以外の魅力もたくさんある。まず走り。今回乗ったのはPHEVの「RS」だが、この大きく、重いボディを軽々と走らせるパワーはさすがである。フル充電では89kmをEV走行できるらしく、実際、試乗中にエンジンがかかることはほとんどなかった。
また、ここが大事なのだが、PHEVという複雑なシステムでありながら「トヨタなら壊れないだろう」という安心感がある。もちろん、絶対に壊れないという保証があるわけではないが、これまでの実績がそう思わせる。これぞトヨタの財産だろう。
デザインでは「アイアンマン」を思い出させるロボット風の顔つきが面白い。クラウンシリーズ共通のハンマーヘッドデザインなのだが、ほかとは少し違うテイストになっていて、愛嬌を感じるのだ。
例えばシエンタのCMはクルマが愛犬になるし、デリカミニの「デリ丸」も動物のキャラクターだ。しかし、今の若者たちはロボットやバーチャルなものを、リアルなもののように愛することができる。クラウンエステートのフロントマスクは、そんな世の中の変化に対応していると思う。
もうすぐ令和生まれのデザイナーが活躍する時代になる。カーデザインの常識も変わっていくはずだが、クラウンエステートはすでにその新しい要素を備えているように見える。
「ペットロボット」と「秘密基地」。クラウンエステートの特徴はこのふたつに集約できるのではないだろうか。こんなキーワードが似合うなんて、本当にクラウンは変わったな! と改めて実感する。























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