軽自動車の販売の中心は、広い車内空間が魅力の、全高1700mmを超えるスーパーハイトワゴンに集中している。しかし、走行性能やコスパなどの総合力では、全高1700mm以下のハイトワゴンも負けてない。ハイトワゴンの真の実力は!?
※本稿は2025年6月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:奥隅圭之、森山良雄
初出:『ベストカー』2025年7月26日号
スライドドアを持つハイトワゴンも増えている
軽自動車の販売の中心はいまや、全高1700mm超の、いわゆる「スーパーハイトワゴン」に集中している。2025年5月の数字を見ても、トップはホンダ N-BOX(1万3565台)、2位はスズキ スペーシア(1万2179台)、3位はダイハツ タント(8814台)で、トップ3をスーパーハイトが占めている。
一方、全高が1700mm以下の「ハイトワゴン」は車種が古くなってしまったこともあり、販売は低調だ。スズキ ワゴンRは5597台だが、約半数は全高1695mmでスライドドアを採用する「スマイル」で、全高1650mmでスイングドアの「ワゴンR」は2500台前後となる。
たしかにスーパーハイトの高い室内高による後席や荷室の使い勝手は魅力的だ。しかし、実際、小さなお子さんがいるファミリ―でなければ、そこまでの後席&荷室空間は必要ないのでは? との疑問もある。
スーパーハイトが選ばれる理由としてスライドドアの利便性が挙げられるが、新型ムーヴのようにスライドドアを持つハイトワゴンも増えている。そんな状況下の今、あらためてハイトワゴンの実力を検証したい。
ハイトワゴンの使い勝手と走りはどうだ!?
N-BOXに代表されるスーパーハイトは全高が1700mmを超え車内が広く、外観の存在感も強い。
新車として売られる軽乗用車の約50%を占めるが、4名乗車時の居住性は、全高が1700mm以下のハイトワゴンでも大差はない。
身長170cmの大人4名が乗車した時、後席のスライド位置を後端に寄せると、後席に座る乗員の膝先空間はN-WGNとワゴンRが握りコブシ3個半、ムーヴキャンバスは3個分だ。N-BOXの4個分とそう変わらない。ハイトワゴンでも頭上空間は握りコブシ1つ半前後あり、4名で快適に乗車できる。
荷室容量は各車種ともに充分だ。特にN-WGNのプラットフォームはN-BOXと共通で、燃料タンクを前席の下に搭載する。そのために荷室開口部地上高が低く、N-BOX同様50cm未満だ。床が低いためにハイトワゴンだが荷室天井部高は114cmと余裕があり、荷室を棚のように上下2段に分けて使える。
ワゴンRは後席を前倒すると座面も下がり、床の低い平らな荷室になる。前後スライドを含めて、後席のアレンジは左右独立式。ワゴンRとハスラーのアレンジは、ハイトワゴンでは最も多彩だ。
ムーヴキャンバスは全高が1700mmを下まわるハイトワゴンだが、後席のドアがスライド式というのが特徴的で、人気が高い。
後席の下には引き出し式の収納設備も採用した。収納設備を引き出して、ついたてを持ち上げると、バスケット状になって内側に置いた買い物袋が走行中に倒れにくい。
全車両側スライドドアが電動式だから、後席の右側に荷物を置き、電動スライドドアを閉めている間に運転席に座ってスムーズに発進できる。
しかしこの機能のため、後席シートアレンジが簡素化され、床から座面までの高さが取材時の計測値で32cmと小さく、ほかの車種と異なり膝が持ち上がり足を前方へ投げ出す、いわゆる体育座りになりやすい。
このようにハイトワゴンは、各車が独特の機能と使い勝手を備える。
そしてハイトワゴンには、スーパーハイトワゴンに比べて優れた特徴も多い。全高が100mm以上低いため、例えばN-WGNの車両重量はN-BOXよりも約60kg軽い。動力性能に余裕があり、低重心になって走行安定性も向上する。
N-BOXはレーンチェンジ時など、ワンテンポ遅れて車体が反応する動きをする。また、燃費も7%ほどN-WGNが優れる。さらにハイトワゴンは価格も割安。N-WGNの場合、N-BOXの同等グレードと比較して14万円ほど安い。
スズキ ワゴンR
後席の背もたれを倒すと座面も下がり、床の平らな大容量の荷室になる。後席の格納操作、前後スライドともに左右独立式だ。
収納設備も豊富で、助手席の下に大型ボックスが備わる。ハンドルが付くから車外にも持ち出せる。後席のドアには傘立ても装着した。後席のドアも横開きだが、開口角度が大きく乗降性が優れている。
●ベストカー編集部のユーティリティチェック:お客様ファーストに拍手
デビューした2017年、USBはType-Aが主流だったが、2022年に改良を実施した際にType-AとType-Cを標準装備化。時代の流れにしっかりと対応する姿勢には思わずほっこり。
もうひとつ取り上げたいのが傘立てをリヤシートにふたつも完備していること。最近は急に雨が降ることも多いので、日常で役立つ場面もあるはず。このあたりの配慮は涙モノ。
































































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