「重なり合う」部分と「異なる」役割
欧州風の小型スポーツセダンとして登場したアルテッツァは、若年層や走りにこだわる層を中心に支持を獲得した。コンパクトな車体は取り回しに優れ、6速MTや専用サスペンションを備える点は、輸入車ライクなこだわりを求めるユーザーの心をとらえた。
一方のマークIIは、歴史ある高級セダンの王道を歩むモデル。広い室内空間と直6エンジンによる余裕ある走りを武器に、国内のファミリー層やビジネス需要に応えると同時に、スポーツ志向のユーザーにはツアラーVを用意するなど、多面的な魅力を発揮した。上質な日常のセダンでありながら、モータースポーツやカスタムシーンでも強い存在感を放っていた。
こうして見ると両車は方向性が大きく異なるように思えるが、実際には重なる部分もあり、「どう違うのか」と当時疑問を抱いた人も少なくなかっただろう。
このような構図となったのは、トヨタが国内での需要に応えつつ、グローバル市場で勝負を見据えていたからだ。マークIIは国内に根付いた高級FRセダン文化を体現したモデルであり、長年の固定ファンを抱え、営業車や公用車としての需要もあるなど、簡単に廃止できる存在ではなかった。
ただトヨタとしては、当時の北米市場、特にプレミアムカテゴリで戦っていくためのブランド「レクサス」の持ち球を用意する必要があった。1990年代に勢力を伸ばしていた欧州プレミアムブランドに対抗するモデルを開発することで、グローバル市場に勝負を挑んだ。重なる部分もあった両モデルだが、与えられた役割は明確に違っていたのだ。
◆ ◆ ◆
輸入車ライクなスポーティセダンとして若い世代から支持を集めたアルテッツァと、国産伝統の高級セダンとして幅広い層に支持を集めたマークII。両車の並存は、1990年代から2000年代にかけてのトヨタの懐の深さを象徴する存在だった。効率重視のラインアップが主流となった現在からみると、クルマファンとしては、実にぜいたくでうらやましい時代だったと思う。
【画像ギャラリー】個性的な小型FRスポーツだった トヨタ「アルテッツァ」と「アルテッツァ ジータ」(12枚)画像ギャラリー












コメント
コメントの使い方アルテッツァは出た当時は「がっかり」感の方が強かったと記憶しています。欲しかったのはコンパクトFRスホーツ(AE86のような車)であって3ナンバーセダンではない。3ナンバー=デカくて重い セダン=おっさん車の印象が強かった。ただ今になるとすごく良いサイズ感に感じて価値を見出せる。まあ、AE86も発売当時は評価低かったですけどね。
昔の最繁セダンの立ち位置であるSUVで、トヨタだけでハリアーやRAV4、カロクロなど競り合ってて
強烈な加速のPHEVや、ハンドリングを楽しめるGRなどまで選べる、超贅沢な時代が今です。
しかもSUVやコンパクトに限れば、そこに他メーカーも競合として食い込んできて選択肢が広く、スポーツカーも新車で買えて車検も通しやすくなった。
未来人が羨む自動車好きにとって最高な時代、それが今です