米国の気候変動対策がなくなる?
環境規制政策に目を転じると、トランプ政権は予想を超える急転換を打ち出しています。2025年1月の就任初日に、パリ協定からの離脱推進や温室効果ガス(GHG)規制緩和の大統領令に署名しました。
5月には、カリフォルニア州が進めてきた「ACC-II」(2035年までにハイブリッドを含むエンジン車を全廃する規制)への認可を取り消しました。これは日本車にとって環境規制の負荷を大幅に軽減する変化となります。
ACC-IIは日本車の競争力を根底から揺るがすものであり、各社が必死にEVシフトを進めていた理由でした。少なくとも4年間は規制が復活することはないでしょう。
7月4日、トランプ政権は「大きく美しい一つの法案(OBBBA)」を成立させ、バイデン前政権が推し進めたEV補助金制度をことごとく前倒しで廃止しました。ハイブリッド車人気には追い風となります。
トヨタやホンダは2030年に北米販売の60%超をハイブリッドが占めるとの見通しを示しており、現実味を帯びてきているのです。
同法で連邦燃費基準(CAFE)の罰金制度まで廃止しました。これによりカーボンクレジットの価値は失われ、テスラなどの収益構造に大打撃を与えることになります。
EPA(米国環境保護庁)は連邦GHG規制の根拠法の撤廃を提案しており、場合によってはGHG規制そのものが消滅し、自動車産業を縛ってきた三つの環境規制が一挙に失効する可能性が出てきているのです。
バイデン政権下での急進的なEVシフトは日本車の競争力を削ぎ落とす懸念がありました。トランプ政権の政策転換は、その流れを反転させたと言えるでしょう。メディアは関税ばかりに注目していますが、この政権交代は国内自動車産業にとってプラスとなる可能性もあるのです。
だからといって、電動化努力を怠ってよいという意味ではありません。むしろ冷静かつ着実に、収益性と競争力を両立できるEV戦略を再構築する時間的な猶予を得たと考えるべきです。

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