内燃機関のカーボンニュートラルといえば、e-fuel(内燃機関)に注目が集まるが、バイオエタノールを使えば今すぐCO2を減らすことができる! トヨタを中心にソルガムという植物から非可食のバイオエタノールを生産中。福島県大熊町の拠点に内燃機関存続の未来があった。
文・写真/ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ガソリン車を存続へ!!!! CO2を減らすことができる「e-fuel」ができるまで(7枚)画像ギャラリーソルガム(もろこし)を育て、バイオエタノールを製造
「バイオエタノールならハイブリッドもプラグインハイブリッドも技術的には問題ありませんし、過給エンジンの実験ももちろんやっています」
トヨタ自動車のCTO中嶋裕樹副社長は内燃機関のカーボンニュートラルを達成し、生き残るためにはバイオエタノールが大きな可能性を持っていることをアピールする。実際にトヨタはブラジルでガソリンにエタノールを混ぜて走るフレックス車と呼ばれるモデルが人気でカローラクロスやカローラなどハイブリッドモデルが特に好調だ。
内燃機関のカーボンニュートラルの決め手とされるe-fuel(合成燃料)だが、製造コストが高く、普及には時間がかかる。すぐにでもカーボンニュートラルを進めるのに効果的なのがバイオエタノールを燃料とするすることだ。実はトヨタ車をはじめ国産車の多くがE10と呼ばれるバイオ燃料の混合比率10%に対応済みだ。
給油口を開けてみてほしい。裏ブタには「E10/ETBE22」と記載されているはずだ。E10はガソリンにバイオエタノールが10%(体積比)混合した燃料のことを指す。またETBE22はバイオエタノールから合成したエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)を混合した燃料のことだ。こちらはガソリンにETBEを体積比22%混合していることを表している。
バイオエタノール車はブラジルやアメリカで普及が進むが、さとうきびやトウモロコシから製造しており、食料競合を引き起こすと問題になっている。そこでトヨタ自動車を中心に人間が食料としない非可食の植物からバイオエタノールを製造しようというプロジェクトを福島県大熊町で進めている。
カギとなるのはソルガム(もろこし)という植物だ。ソルガムは紀元前からアフリカなどで育てられており、乾燥に強く痩せた土地でもよく育つことが知られている。世界では食用としているところもあるが、日本では食用とはされない。また日本名はもろこしというが、トウモロコシとは別の植物だ。
80種のソルガムから品種改良、バイオエタノールを効率的に作る取り組み
大熊町にある0.5ヘクタールの甫場(ほば)では3万本のソルガムが育てられており、高さ6mにもなるものもある。世界から取り寄せた80種のソルガムから品種改良を進めるほか、小さくても早く育てて1年に2回収穫するのか、それとも1回で大きく育てるほうが収穫が上がるのか試行錯誤を繰り返し、一般的なソルガムに比べると1.5倍の収穫量が得られるようになったという。
このソルガムを使い、バイオエタノールを生産研究する設備が大熊町にある。次世代グリーンCO2燃料技術研究組合(raBit・ラビット)という組合が運営するもので、1.搾汁 2.前処理 3.糖化 4.発酵 5.蒸留・無水化の5つの工程を経て1週間かけてバイオエタノールが出来上がる。このうち特に重要なのは前処理、糖化、発酵の3つで、ラビットはいずれも世界トップレベルの技術を持つが、新たに開発したトヨタ酵母菌によってエタノール理論収率95%を実現している。その結果生産量は1日最大300L、1年で60kLになる。
実証実験段階だが、ソルガムが土地を選ばないことを考えれば、より大きな設備を作りバイオエタノールを大量生産することも難しくない。ちなみに発酵段階でCO2が排出されるが、しっかりキャプチャーし横浜にあるエネオスの合成燃料製造施設に送られ、活用されているから抜かりない。









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