日本の自動車メーカーの損失は!? トランプ大統領の切り札「トランプ関税」の現在と今後

関税引き上げに見えてくる「トランプ・プラン」

 一連の関税措置についてトランプ大統領は「相互関税」という言葉を使っている。一見高率に見える関税だが、あくまで相手国と貿易上のバランスを取るための正当な関税と主張しているのだ。

 自動車・部品の関税がゼロ%の日本に対して15%の関税を設定することのどこが平等なのかと思わず言いたくなるが、実はトランプ大統領が課税根拠としているのは関税税率ではなく貿易収支。2024年の日米貿易収支は日本側9兆円の黒字。関税によってこの数字を減らそうというのがトランプ大統領のプランだ。

 機会の平等でなく結果の平等を求めて関税を設けるというのはあまりにも斬新な発想で到底容認できるものではない。が、それがいつまで続くかは不透明。米国内でトランプ関税によって損害を被る産業やそれを支援する非政府組織がトランプ関税は違法という訴訟を起こしているのだ。

 その決着はまだついていないが、三審制のうち二審まではトランプ関税は大統領権限を逸脱しているという判決を出している。三審の連邦最高裁判所で違法という判決が出ればトランプ関税は法的根拠を失う。しかしトランプ大統領は現時点で仮に敗訴しても別の手を打つと宣言し、絶対に退かない構えを見せている。

北米輸出に依存しているメーカーはかなり厳しい状況

トランプ関税の日本メーカーへの影響 評価は★ひとつ20点で、★が少ないほど影響が大きい。NAは算出不能の意味 ※影響率=関税損失÷(営業利益+関税損失)
トランプ関税の日本メーカーへの影響 評価は★ひとつ20点で、★が少ないほど影響が大きい。NAは算出不能の意味 ※影響率=関税損失÷(営業利益+関税損失)

 先に述べたように関税は輸入の際に課される税であり、素材の生産、部品、完成車の組み立てがすべて米国内で完結している場合は直接的な影響はない。逆に日本から米国に輸出をまったくしない場合も直接的な影響はない。

 問題となるのは、日本から素材、部品、あるいは完成車を輸出する場合。関税を支払うのは品物やサービスを輸入する事業者で、日本のメーカーが直接負担するわけではない。

 が、関税分を上乗せした価格で消費者が買ってくれるならいいが、実際には値上げをすると売れゆきが落ちるため、現実には出荷価格を下げるなど、日本側も出血を強いられる。

 影響が大きいのは当然、日本からの輸出比率が高いメーカー。そして米国への依存度が高いメーカーだ。表を見ても最も打撃が大きかったのは国内生産比率が高く、海外拠点も高関税を課されたメキシコにあるマツダ、次いで米国比率が高いスバルだ。

 トヨタ自動車は業績への影響度合いはその二社より小さいが、絶対的な台数が多いため減益要因としては巨額になった。

 果たして今後、日本勢がどのような影響を受け続けるのか、当面米国の司法の判断を固唾を呑んで見守るしかない状況だ。

■日本メーカーへの評価コメント

●トヨタ自動車:80点/北米に大規模生産拠点を持つため対応力は高いが、日本からの輸出台数も多く、影響額が大きく出た。

●ホンダ:90点/利益率が下がっているため影響の度合いは大きいが、現地化を積極的に進めており、影響額は比較的少ない。

●日産自動車:80点/経営危機で少しの減益でも打撃を被る状況だが、北米生産は活発で、影響額はホンダと同様抑制された。

●三菱自動車:70点/北米での生産を放棄していたことがプラスに作用して影響は小さいが、今後北米ビジネスはやりにくくなった。

●マツダ:30点/輸出比率が高いうえ、北米拠点があるメキシコが高関税を課される不運が重なり被害甚大となった。

●スバル:40点/北米生産を強化していたことで致命傷は免れたが、かねてからの過剰な米国依存が裏目に出た。

●スズキ:100点/北米での四輪販売からいち早く撤退していたため、主要メーカーでは被害はもっとも少なかった。

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