先代を超えていくための条件とは何か?
「フィット」ブランドは、今や国産コンパクトカーの定番となっている。
しかし、初代と2代目は、年間の登録車販売台数で1位を獲得しているものの、先代の3代目フィット(2014-2020)は、2位こそあれど、1位は一度も獲得していない。プリウス、アクア、ノート、このあたりの背中をずっと追い続けてきたクルマなのだ。
2019年はフリードにも抜かれてしまった。フィットが王者であったのは過去の話。フィットは、ライバルに対してはチャレンジャー(挑戦者)であり、「弱者」として挑む心構えが必要だといえる。
「ランチェスターの法則」というものをご存じだろうか。第一次世界大戦での航空戦から生まれたもので「同じ武器なら勝敗は兵力数で決まる」と、戦力を理論化したものだ。
現代では販売競争に勝ち残るための戦略論として活用されている。このランチェスターの法則において、弱者が採るべき戦略は「ゲリラ戦」だとされている。
弱者はできるだけ近接戦に持ち込み、そこで武器効率(商品のもつ魅力)、もしくは兵力(物量)で相手を上回らなければならない。
要するに、販売市場や販売地域を絞って、その中で独自の点を持つ商品をターゲットに向けて販売せよ、ということだ。
強者に比べて規模やブランド力で劣る弱者が勝つには、「商品魅力や販売の独自性・質・新たな体験を提供すること」が必要であり、新型フィットにはこれが求められるのだ。
ちなみに、強者の基本戦略は、「競合他社のやり方を模倣したうえで大規模な資金や人員を投入し、物量で圧倒する」ことだ。
「エルグランド→アルファード」、「フィット→アクア」、「モビリオ(フリード)→シエンタ」、当時の状況は少しずつ異なるかもしれないが、これまで王者トヨタが取ってきた戦略そのものである。
新型フィットは何パーセントが出来ているのか?
ホンダは、新型フィットの魅力を4つの「心地よさ」にあるとしている。(1)心地よい視界、(2)座り心地の良さ、(3)乗り心地の良さ、(4)使い心地の良さの4つだ。この4つを、弱者の戦法の「ゲリラ度」に当てはめてみた。
(1)心地よい視界 ゲリラ度90%
先代からの大掛かりな改良点である「Aピラーの細さ」は、乗り込んだ瞬間に誰でも分かる。同社のN-BOXもAピラーが細く、サブAピラーの方で剛性を確保する、という設計となっており、ホンダのこだわりポイントだといえる。
また、液晶メーターも明瞭な表示で見やすいのだが、ややシンプル過ぎてチープに見える。
(2)座り心地の良さ ゲリラ度30%
ホンダによると「人間研究をしてシートを開発した」そうだが、マツダや日産、トヨタなど、どのメーカーでも当たり前に研究されていることであり、むしろ今までされていなかったとしたら、そのことのほうがおかしい。
実際に新型フィットに乗り込んでみたが、他メーカーに対して絶大なアドバンテージがあるようには思えなかった。
(3)乗り心地の良さ ゲリラ度100%
e:HEVとよぶ2モーターハイブリッドシステムが最大の魅力だろう。
e-POWERのように普段の走りはEVで、高速クルージングなどではエンジンで駆動する、という理にかなったシステムを、この価格で出してきたことは、凄いことだと思う。運転フィールは、ほぼEVなので静かで快適だし、高速走行も良い。
(4)使い心地の良さ その1 ゲリラ度50%
センタータンクレイアウトによる圧倒的な広さは、歴代フィットの魅力だ。自転車もそのまま入るという宣伝はインパクトがある。
(4)使い心地の良さ その2 ゲリラ度70%
また、HONDA SENSINGを標準装備、ACCは渋滞追従機能付。ガソリン仕様の燃費は19.4~20.4km/L、e:HEVは27.2~29.4km/L(WLTCモード)と新型ヤリスには若干届いていないものの、驚異的なカタログ燃費だ。
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