気候変動対策として注目されるCNエネルギー。マツダは次世代バイオディーゼル燃料の活用に向け、モータースポーツなども通して開発や普及に取り組んでいる。次世代バイオディーゼル燃料の今を大音安弘氏が取材した。
※本稿は2025年9月のものです
文:大音安弘/写真:大音安弘、マツダ
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
次世代型SKYACTIV DはHVOに対応
地球温暖化の抑制のため世界的にBEVシフトが叫ばれる今、段階的な普及が進むなかでも新たな課題が見えてきた。それを踏まえ、本当にエンジン車がダメなのかという疑問を持つ人も少なくないだろう。
エンジン車の活路として注目されるのが、カーボンニュートラル(CN)のバイオ燃料だ。海外ではバイオエタノールを混合したガソリンを販売。軽油では、欧州でHVO(エイチブイオー)というバイオ燃料の販売が拡大している。
現在、流通するディーゼル車向けバイオ燃料の主力は、廃食油を原料とする2種類。メタノールと反応させ、メチルエステル化処理をしたFAME(フェーム)、水素と反応させ、石油に近い分子に作り替えた水素化処理のHVOだ。
しかし、FAMEは発熱量が小さく、材料腐食性もあり、日本では軽油への混合率が5%と定められ、CO2削減効果は薄い。
一方、HVOは、軽油同様の発熱量があり、材料腐食性もない。ただし軽油より燃えやすく、その点をエンジン側でクリアすれば、理想的な代替軽油なのだ。
マツダは、欧州の動向に即するように、新世代のSKYACTIV D 3.3では、エンジン単体と電動化などで燃費効率をより高めるだけでなく、HVO100%対応を前提に開発。すでに耐久テストも実施し、欧州では2025年度中のHVO対応を発表する予定だ。
ただ欧州のHVOが100%品なのに、日本は、「サステオ51」の混合率51%が最大。これは税制の問題があり、軽油と同等成分ではないものを自動車に使うと脱税となるため。何とももったいない話である。
素晴らしいHVOだが、課題はある。目下は流通と価格だ。
ガソリンスタンドでの取り扱いだと、専用タンクが必要で、売価も軽油より高価。他のバイオ燃料を含め、企業が課されるCO2削減の手段のひとつに留まるのが現状なのだ。
だが混合品は軽油扱いなので、ガソリンと違い、法規面と安全性の両面で扱いやすい。代替軽油を自身で保管して使えば、CNとともに災害対策にもなる。その利便性が理解されれば、企業や自治体での活用が広まる可能性もあり、入手性の向上に繋がるはずだ。
ただ、製造元のユーグレナによれば、軽油並みの価格の実現は難しく、政府の支援を必要とする。欧州も補助金で軽油同様の価格を実現しているのが現実なのだ。
また、材料もCNである必要があるため、材料確保も課題。ミドリムシが有力だが、非現実的な価格であり、さらなる研究が必要だ。
いずれにしても、化石燃料の発電が多い国でのCN社会実現には、バイオ燃料が有効とわかったのは朗報。決してエンジンの未来は暗くないのだ。














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