出る杭は……打たれなかった!! 常識を覆した「異端エンジン」列伝

そのサウンドに酔いしれろ!

●ホンダ VTECシリーズ

出る杭は打たれるの常識を覆した!! 「異端エンジン」列伝
ホンダ インテグラXSi(1989年)。可変バルブタイミング機構のVTECエンジンを初めて採用したモデルであり、走り重視のユーザーから大きな支持を得た

 クルマに使われる4サイクルのエンジンでは吸気-圧縮-燃焼-排気という工程を繰り返して回転を生み出すが、その構造上、低回転域と高回転域のどちらに最適という吸・排気を行うのは難しかった。

 これは回転数によって適したバルブの開き具合(バルブタイミング)が異なるからで、低回転と高回転のいずれかを重視した場合は片方を犠牲にせざるをえなかった。

 こうした問題を解決するために生み出されたのが、ホンダが1989年に登場させた可変バルブ機構の「VTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system)」だ。

 詳細な構造解説は割愛するが、バルブタイミング(バルブ開閉の角度)を可変させるVTECにより、低回転時の燃費向上と高回転でのハイパワー化が実現できた。

 VTECエンジンを初搭載したホンダ インテグラXSi/RSiは、当時の量産車用自然吸気エンジンでは初となる1リッターあたり100psの高出力を発揮しながら、低回転での扱いやすさも両立させることに成功した。

 登場直後はVTECの効率に疑問が持たれることもあったが、VTECエンジンはそれを跳ねのける高性能ぶりを見せて、一躍ホンダのフラッグシップエンジンへと躍り出た。

 低回転域の効率が高いゆえに思い切った高回転設定も可能なVTECエンジンは、特にその高回転域でのサウンドを高く評価する意見も多く、一部には信仰に近い支持を行うユーザーも存在する。

 すでにデビューから36年が経過したVTECだが、その進化は続いている。

エボリューションは止まらない!

●三菱自動車 4G63ターボ

出る杭は打たれるの常識を覆した!! 「異端エンジン」列伝
三菱自動車 ランサーエボリューション(1992年)。2代目のランエボII登場以降は後継車種と区別するためにランエボI(ワン)と呼ばれるようになった

 三菱自動車がWRC(世界ラリー選手権)制覇を目的に開発したモデルがランサーエボリューションシリーズ。

 通称「ランエボ」と呼ばれる同シリーズのファーストモデルは1992年に登場するが、このクルマに搭載されていたのが2.0リッター直列4気筒の4G63ターボエンジンだった。

 4G63エンジン自体は1987年デビューのギャランVR-4に採用されていて、当初の最高出力は205ps。

 この4G63がやがて240psにチューンアップされ、初代ランエボ搭載時には250psへのパワーアップを実現した。

 そして注目なのがそのトルクで、初代ランエボの時点で31.5kgm/3000rpmと極太。強大なトルクを生かした圧倒的な加速力を発揮したものの、ラリー用チューンということあって、ピーキーで少々扱いづらい性格も見せていた。

 タフなライバルも多いWRCで鍛えられたランエボ&4G63ターボの進化は続き、ランエボは最終的にX(10)まで続く名シリーズとなった。

 同時に4G63ターボもランエボIX(9)まで採用される息の長いエンジンになり、IXでは可変バルブタイミング機構も装備することにより、41.5kgm/3,000rpmものトルクを発生しながら、扱いやすさも向上させた。

 4G63ターボは、ランエボシリーズだけでなく、シャリオやRVR、ディオンなど、他の三菱自動車製モデルにも搭載されていた。

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