2017年、スバルは中島飛行機製作所の前身である飛行機研究所の創設から数えて100年の節目を迎えた。
1950年代に自動車の開発に乗り出し、1958年には軽自動車の不朽の名作、スバル360を送り出した。余勢を駆って1966年5月にFF(=前輪駆動)方式のスバル1000を発売している。
この先進的なセダンに積まれていたのが、日本の量産エンジンとしては初となるアルミ合金製の水平対向4気筒OHVだ。
水平対向4気筒エンジンは、ボクサーが打ちあうようにピストンが横に動くから「ボクサー4」とか「フラット4」と呼ばれている。
多くの魅力を持つパワーユニットだから、スバルのエンジニアと首脳陣は常に水平対向エンジンにこだわり続けた。
1971年秋に誕生したレオーネは、時代に先駆けてパートタイム4WDを設定。水平対向エンジンに縦置きトランスミッションの組み合わせは、4WD化しやすいのも特徴のひとつ。シンメトリカルAWDの誕生は必然だったのである。
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その後もレガシィ、インプレッサなどに搭載され、現在まで進化を続けてきた水平対向エンジンだが、近年ではどちらかといえば“熟成”が中心で、ドラスティックな進化を遂げた印象は薄い。さらに燃費にも厳しいといわれる。
WRX STIもついに生産終了となった。強化される燃費規制に対応してスバルの象徴は生き残れるのだろうか? 自動車評論家の片岡英明氏が解説する。
文:片岡英明
写真:SUBARU、編集部
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スバルとポルシェだけ? そもそもなぜ水平対向なのか
たくさんの魅力を備えたエンジンでありながら、ほとんどのメーカーは追随しない。現在でも、一部の例外を除けば水平対向エンジンを生産し、クルマに積んでいるのはスバルとポルシェだけだ。
2輪の世界に広げてもBMWとホンダなど、少数である。その理由は生産性が悪いからだ。部品点数は多くなるし、シャシーやトランスミッションも専用設計にする必要がある。生産コストがかさむから多くのメーカーは手を出さないのだ。
それでもスバルとポルシェが水平対向エンジンにこだわり続けているのは、重心が低く、振動も少ないからである。剛性も高い。スポーツモデルにはメリットが多いのだ。
ポルシェはスポーツカーメーカーだから生産量は知れている。高性能化と個性化が第一と考え、コスト面や生産性は割り切った。
だが、スバルにはファミリーカーが多く、ユーザー層も幅広い。だから扱いやすく、燃費もいいエンジンを目指さざるを得ないのである。
スバルのクルマは「燃費が悪い」の実情は?
平成の時代になってもスバルは水平対向エンジンを作り続けた。年号が平成に変わった1989年1月に登場したレガシィには「EJ」系と呼ぶ新設計の水平対向4気筒エンジンを積んでいる。
EJ20型のフラッグシップにはDOHCターボを据えた。ターボは、その後、ツインターボや斜流ターボなどに進化させ、弱点だった応答レスポンスの悪さの解消を目指している。
また、排ガス対策に水平対向エンジンのレイアウトは不利だが、燃焼方式や触媒などに工夫を凝らして乗り切ってきた。
同じ排気量のライバルと比べ、劣勢だった燃費も技術を積み重ね、ライバルと互角かそれ以上のレベルに引き上げている。
スバルのクルマは燃費が悪いと言われているが、それは過去の話。最近のスバルは、4WDモデルであっても実用燃費はライバルに負けていないのだ。
スバルは一時期、ポルシェと同じように水平対向6気筒エンジンを開発し、4WDのスポーツモデルに搭載していた。2.7LのER27型は日本初の水平対向6気筒だったし、これに続く3.3L水平対向6気筒(EG33型DOHC)をアルシオーネSVXに積んでいる。
水平対向6気筒はエンジンの長さを短くすることができるから、パッケージングの点で有利だ。V型12気筒エンジンと同じように完全バランスだし、排気系の取り回しもラクだから振動も小さいなど、快適性も高い。熱の問題も出にくいから高回転まで使いきることができる。
だが、ボクサー6は高い生産精度が要求され、燃費の点でも不利だ。今は環境性能を重視する時代だから、水平対向6気筒は住む場所がなくなっている。
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