30年愛された名エンジンの引退と「転換」
スバルは、ビッグボアのオーバースクエア設計の水平対向エンジンばかり設計してきた。高回転まで気持ちよく回り、痛快だからだ。
が、排ガスがクリーンで燃費がよくないと生き残れないから、スバルはロングストローク設計のエンジンづくりに転換する。
こうして誕生したのが(フォレスター、インプレッサ/XVに搭載されている)FB20型水平対向エンジンだ。それまでのEJ20型とはレイアウトが大きく変わり、下まわりをスッキリとさせ、インジェクターなどの配置も変更した。
また、直噴システムやターボを搭載できるように、最初から空きスペースをとっている。これはスクエア設計のFA20型DOHCにも言えることだ。ターボは直噴システムを加えた「DIT」になった。
インプレッサとXVにはマイルドハイブリッドも加わっている。時代の要請に応え、排気量を下げたダウンサイジングターボも誕生させた。2020年秋には新型レヴォーグが燃費とドライバビリティを向上させた新設計の1.8L直噴ターボエンジンを積む。
2019年、30年の長きにわたって生産され、名機の名をほしいままにしたEJ20型エンジンが生産を打ち切っている。この情報が流れると水平対向エンジンの未来を危ぶむ声が出始めた。欧米を中心に、“CAFE”と呼ばれる企業別平均燃費基準は厳しさを増すばかりである。
水平対向エンジンの存続と進化の方向性は?
これは車種別の燃費基準ではなく、メーカー全体の出荷台数を加味した平均燃費を算出し、規制をかけていこうというものだ。日本でも20年度から、この方式に移行した。
ある特定のクルマでは燃費基準を達成できなくても、他の車種の燃費を向上させればCAFEの燃費基準をクリアできるが、電動化は避けて通れない。
スバルは「e-BOXER」(eボクサー)と呼ぶマイルドハイブリッドを送り出しているが、この先は提携しているトヨタのストロングハイブリッドシステム「THS II」を用い、地球温暖化の元凶となるCO2低減に取り組んでいくだろう。
が、伝統の水平対向エンジンを捨てるわけではない。水平対向エンジンに組み合わされている縦置きの変速機にモーターをはさみ、新しいシンメトリカルAWDを生み出すのである。
スバルは電動化に後れをとっていると言われるが、ライバルより早い時期にEVの開発に着手していたのだ。R1eやステラEVは発売直前まで行っていたが、トヨタとの提携によってお蔵入りした。だからストロングハイブリッドに対する知識も豊富だ。
また、4輪駆動なら回生エネルギーの回収も効率よく行えるはずである。燃費に不安のある水平対向エンジンの燃費は飛躍的によくなるだろう。モーターは瞬発力が鋭いから、ドーンと電気を流してやればターボ以上にスポーティなクルマに仕立てられる。
もちろん、その先にはEVがあるが、これもモーターの長所をフルに使い切ったスポーティな味付けとするはずだ。が、当分の間、内燃機関はなくならないだろう。
スバルの水平対向エンジンは今後も開発が続けられ、CO2削減と燃費向上に力を注いでいくから、これからの進化に期待したい。
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