近年耳にするSDV(ソフトウェア・ディファインド・ヴィークル)という言葉。ソフトウェアで制御され、ソフトウェアの更新でクルマが進化するというこのSDVを、トヨタはまず「安全」のために使用するという。その取り組みをご紹介しよう。
※本稿は2025年11月のものです
文:国沢光宏/写真:池之平昌信、トヨタ
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
トヨタが取り組むSDVの安全技術
トヨタが「事故を起こさないための技術」をいくつか発表した。内容といえば相当難解&複雑だったりする。かみくだいてわかりやすくお伝えしたい。
まず2026年あたりから日本でも中国で実用化されているAIを使う高機能ADAS(運転支援)が続々と登場してくる。
中国はすでに『モメンタ』に代表されるスタートアップが自動車メーカー向けに“ほぼ”自動運転可能なプラットフォームを販売中。中国で販売を開始した日産N7やトヨタbZ3Xに実装されており、北京や上海の市街地すら目的地を設定するだけでハンズフリー走行可能である。
先日公開された日産の『次世代プロパイロット』はモメンタと同レベルの能力を持っていて、2027年に発売された時点でナビ画面に目的地を設定したらハンズフリーになる。
ただし、運転の主体はドライバーであり、自動運転じゃなく高機能なADASという位置づけ。同じようなレベルの高機能ADASは、ホンダ、トヨタ、スバルにも2027年までに実装される。
さて、今回トヨタがお披露目した技術は、高機能ADASをベースにしたものになる。
ひとつは「合流技術」。高速道路の本線に合流したり、工事で車線規制されているような時の合流する制御、なかなか難しい。高機能ADASであれば限りなく100%に近い成功率で合流できるものの、完全に100%とはならない。最悪の場合、急停車しなければならないこともある。
トヨタは航空機の官制のような技術を開発している。クルマからの情報(GPSやカメラ、レーダーからの情報やほかの車両の位置など)をAIが管理する「管制官」に送る。
AIは他車との間隔を考え、流入しようとする車両の速度を総合的に管理する。走行車線を走っている車両も同じシステムが付いていれば、さらに精密な管制が可能。100%の成功率を目指す。
はたまた強引に割り込んでくる車両あれば高機能ADASで減速。ドライバーがイラッと感情的になることを防ぐため、やさしい声質で今起きていることの“解説”をしてくれる。例えば「合流車くるって」といった音声が流れる。
左折時に横断歩道を渡ってくる歩行者がいたら、高機能ADASで減速。これまたドライバーに対し「歩行者に注意」と解説する。こういった危険を先読みする情報を出すことで快適なドライブ環境を整える。
ただ子どもなどが見にくい交差点から飛び出してくるような事象は「信号機などに取り付けられたカメラ等の情報をクルマに送る」という、国交省が推進しているITS(高度道路交通システム)のようなインフラを必要とする。
ただし、トヨタだけじゃ無理だし、ITSを見てわかるとおり全国の信号機や交差点にカメラなど必要になるため実現は難しいと考えます。やはりクルマはスタンドアローンです。


















コメント
コメントの使い方