東京タワーを背景に、ネオクラからファミリーカーまで約50台が静かに並んだ秋の午後。SNSのタイムライン越しにクルマ愛を感じたオーナーたちを、ソフト99がひとりずつ「会いに行きたい」と集めたイベントが「くるままていライフ」と呼ばれるものだった。
文:ベストカー編集部 鈴村朋己/写真:望月勇輝
【画像ギャラリー】RX-7にセドリックワゴンも綺麗すぎ!! ソフト99が主催するイベントの臨場感を堪能してほしい!!!!!(16枚)画像ギャラリーSNSから見つけたクルマを愛でる人たち
秋風が吹くたびに漂う銀杏の香り。同じくして舞う枯葉たち。羽織っている薄手の上着がちょうどいい気候。雲ひとつない東京タワーが映える芝公園には、ネオクラシックカーからひと昔前の国産・輸入車とジャンルを問わないモデルたちが、静かに鼻先を揃えていた。
この日、ここに集まったクルマは約50台。 共通しているのは、どの一台も、オーナーにとって「ただの移動手段」ではなく、「大切な相棒」として扱われていること。そして、どのボディを見渡しても、新車のようにツヤツヤと輝いていることだ。
この秋、カーケミカルメーカー・ソフト99が主催したイベント「くるままていライフ」は、そんな愛でられているクルマたちと、そのオーナーたちが一堂に会する、ちょっと特別な1日になった。
「まてい」とは、「まごころ込めて、丁寧に」を略した言葉だ。 その名のとおり、「くるままていライフ」に登場するのは、クルマに対してどこか”まごころ”を感じさせる人たちばかり。
今回の来場者は、一般募集で集めたわけではない。きっかけは、ソフト99の担当者が日々眺めていたSNSのタイムラインだった。
日頃から愛車の写真をアップし、洗車やメンテナンスにも手を抜かない。そんなクルマをちゃんと愛している気配の伝わる人たちに、ソフト99側から一人ひとり声をかけていったという。
カーケミカルメーカーがクルマのオーナーイベントを行う真意
2023年にサイトが開設された「くるままていライフ」は、2024年には「まていな人々」と題し、出会ったオーナーごとに個別で撮影とインタビューを行う企画として本格的にスタートした。
東京・大阪・福岡など各地で、少人数ずつ、ゆっくりと言葉を交わしながら、人とクルマの物語を集めてきた。今年はその延長線上に、「せっかくなら、皆さんをリアルな場でつなげてみたい」という思いが重なり、はじめてのイベント開催に踏み切った。
「今までは1対1でカメラの前に立っていただく形だったんですが、今回はオーナー同士がつながれる“オフ会”のような場にしてみたかったんです」とイベントに携わった担当者は話す。
イベントに集まったクルマたちと同様に、オーナーたちの顔ぶれも多彩だ。若いカップル、夫婦、子ども連れのファミリーまで幅広く、その誰もが、会話を楽しみ笑顔が満ち溢れていた。
洗車はきれいにするだけじゃない
ソフト99は、クルマそのものをつくるメーカーではない。 ガラス撥水剤「ガラコ」をはじめとするカーケミカル。つまりクルマのお手入れ用品を手がけている会社だ。
だからこそ、このイベントで伝えたかったのは「もっと商品を買ってください」ということではない。 むしろ、「どうすれば、今のクルマと、これからも気持ちよく付き合っていけるか」という、お手入れの考え方そのものだった。
実際に古いクルマのオーナーからは、「塗装が心配で、もう洗車できないんです」という声も少なくないという。けれど、本当は、やさしく洗える方法さえあれば、もっときれいな状態で、長く乗り続けられるはず。
その想いに応えるように、イベントでは、古い塗装にも負担をかけにくいふわふわのクロスや、水を使わずに洗車とワックスが同時にできるアイテムの実演パフォーマンスが行われた。
洗車は、汚れを落とす作業であると同時に、クルマを守るための時間でもある。ボディをそっとなでながら、タイヤの溝の減りに気づいたり、ワイパーのゴムの傷みにハッとしたり。そんなささいな発見の積み重ねが、クルマのコンディションと、安全なカーライフを支えていく。
若い世代に届くための、“ちょっとエモい”表現を
とはいえソフト99は、長年カーケミカルの「ど真ん中」でやってきた老舗メーカーだからこその悩みもある。若いクルマ好きのなかには、「ガラコやフクピカという名前は知っているけれど、どのメーカーが販売しているかは分からない」という声も少なくない。
そこでソフト99では、「くるままていライフ」のキックオフをきっかけに、ビジュアル表現やロゴも含めたリブランディングに挑戦している。
イベント会場でスタッフが着ていたのは、従来のイメージとは少し違う、すっきりしたロゴが入ったパーカー。サイトのトーンも、いわゆる広告的なビジュアルではなく、ライフスタイル誌のような、余白のある写真と言葉で構成されている。
ゆくゆくは、マグカップやアパレルなど、日常で使えるアイテムへの展開も視野に入れていきたいという。「カー用品メーカーのブランド」から、「カーライフに寄り添うブランド」へ。その一歩を、「くるままていライフ」は担っている。
あの夕暮れを、いつでも思い出せるように
芝公園での開催は、あくまで第一歩にすぎない。今後は、大阪や福岡など、西日本エリアでも同様のイベントを開きたいと考えているそうだ。
ただし、その実現のためにはたったひとつの条件がある。 それは、東京タワーが見えた今回の会場のように、写真を見返したときに「あの時間素敵だったな」と臨場感が蘇るような場所であること。
急激にマルチ展開を広げていくのではなく、長年積み上げてきた技術への信頼はそのままに、少しずつ表現をアップデートしていく。
老舗メーカーらしい誠実さと、今の感覚に寄り添う柔らかさ。その両方をまとったプロジェクトとして、「くるままていライフ」は、これからも、人とクルマの間にある目に見えない距離を、そっと縮めていこうとしている。






















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