世界各国、もちろん日本でも、植物から作るバイオエタノールを自動車の燃料として使う研究が進められている。じゃあ別にBEVじゃなくてもいいの? と考えがちだが、そう簡単な話でもないようだ。国沢光宏氏が分かりやすく解説!!
※本稿は2025年11月のものです
文:国沢光宏/写真:マツダ
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
バイオエタノールは未来の燃料となり得るのか?
カーボンニュートラルについて話をすると、かなりの確率で「バイオエタノールはなんでダメなのか?」と聞かれる。
実際、ブラジルに行くとサトウキビなどから作ったエタノールをガソリンに混ぜる『フレックス燃料』が普通に使われている。エタノール100%の燃料に対応してるクルマだって多い。
植物から作ったエタノールは空気中の二酸化炭素を吸収するため、カーボンニュートラルです。
あまり知られていないことながら、バイオエタノール生産の50%以上はアメリカとなる。アメリカの場合、トウモロコシ(デントコーン)などを原料にしており、すでにガソリンとエタノールの比率が90対10の『E10』を普通にスタンドで販売しており85対15の『E15』も珍しくない。
バイオエタノールを10%混ぜれば、それだけで二酸化炭素の排出量は10%減る。
我が国もトヨタなどが『E20』の試験など行ってます。トヨタによれば20%までの混合率ならガソリンとほぼ同じ特性を持つという。
アルコール特有の膨潤性(ゴムのOリングなどが膨らむ。対応ゴムなら問題なし)さえ考えれば問題ないと言う。しかもバイオエタノール、ガソリンとあまり変わらない生産コストで済む。ブラジルなどではガソリンより安いほど。
よってバイオエタノール100%の燃料ならカーボンニュートラルになりそうなもの。しかし! さまざまな方面から「カーボンニュートラルに認めない!」というダメ出しを喰っている。
最大の理由は人や家畜と共食いになるためとされます。本来なら食糧や家畜の餌になる農産物でエネルギーを作ると、不作の時に燃料用と争奪戦になる。必然的に取引相場は高騰。お金のない人が飢えることになってしまう。そらそうだ。
したがって、現在流通している、食糧にもなる植物から作るバイオエタノールは認められない。
食糧にならない植物から作るバイオエタノールならいいか、となれば、これまた微妙。バイオエタノールを作れる植物にはカロリーが含まれており、その気になったら食糧になるからだ。しかも作るのに二酸化炭素を出す。
農地を耕したり収穫したりする際、エネルギーが必要。そんなこんなで直近で許されているのは藻類くらい。つまり池や沼に生える「藻」である。食糧にならないためOKとされる。
しかし最近になってそれもダメそうになってきた。やはりエタノールを作る時に二酸化炭素を出すためだという。総合して考えると「液体燃料はダメ!」になる。乗用車の将来は電気と燃料電池しかない?









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