東京オートサロン2020において、詳細が明らかになったGRヤリス。
現在、記念モデルとなる「1st Edition」の事前予約を受け付けており、7月から先行予約順に商談を開始するそうだ。久々に登場するスポーツ4WDとして、登場を心待ちにしている諸君も多いだろう。
今回、隠れたスポーツハッチであるノートe-POWER NISMO Sとスペック上でのバトルをしてみた。
最新のGRヤリスと、登場からすでに7年目を超えたノートを比べるのは、いささかナンセンスと思うかもしれないが、動性能のコストパフォーマンスという面から見ると、興味深い結論に至った。その模様をレポートする。
文・グラフ作成:吉川賢一、写真:日産、トヨタ
【画像ギャラリー】GRヤリス vs ノートe-POWER NISMO S
クラス最小、最軽量、ハイパフォーマンスを誇るスポーツ専用エンジンを搭載した「GRヤリス」
注目すべきは、何といっても、GRヤリスのエンジンであろう。1.6リッター直列3気筒にもかかわらず、最大出力272psを発生、リッター当たりの出力は170psというハイパワー。
最大トルクも37.7kgf・mと、1.6リッタークラスでは見たことがないほど太いトルクだ。
最高出力は272ps(200kW)、最大トルクは37.7kgf・m(370Nm)を発生する。まるで、ひと昔前の2リッター級のターボエンジンや、3リッター級のV6 NAエンジン並のパワフルさである。
このスペックを、たった1.6リッター程度のターボ過給で発生していると考えると、数値の土地勘がある方には、驚異的であろう。
セレナe-POWER用のユニットを搭載し、従来の1.26倍ものトルクアップをした「NISMO S」
若干、存在が薄いクルマではあるが、今回、国産ハイパフォーマンスコンパクトとして取り上げるのが、ノートe-POWER NISMO Sだ。
ノートe-POWERのアクセルペダルを底まで踏んだことがある方は伝わると思うが、標準のe-POWERでさえ加速が鋭い。
そこに、車重が1740kgにもなるセレナe-POWERに搭載されている、よりパワフルな動力源を移植している。さらには制御系も変更し、発電量を強化したことで、アクセルに対する反応がさらに速くなった。
最大トルクは25.9kgf・mから32.6kgf・mへと26%もアップ。踏み込んだ瞬間に、視界がゆがむほどに力強いトルクで、1250kgの軽量ボディを爆発的に加速させるのだ。速くないわけがない。
■動性能のパフォーマンスが優れているのはどちらか?
この2台のパフォーマンスを同じ土俵で比べる。一般的に、加速の鋭さのフィーリングは、最大出力よりも、最大トルクに比例するといわれている。
今回、価格が異なる2台の優劣をつけるため、最大トルクを用いて算出する「最大BMEP」にて比較を行う。
最大BMEP(※1)とは、軸トルクを発生させるのに必要なガス圧力が、膨張行程においてピストンが上死点から下死点に至るまでの間を一定と仮定して算出した圧力のこと。
単位はbar(バール)で表し、エンジンの排気量によらず、トルクを横並びに評価できるため、しばしば用いられる理論値である。
※1最大BMEP(正味平均有効圧力)bar=最大トルク(Nm)÷排気量(cc)×4π×10
なお今回、NISMO Sは発電用の1.2Lエンジンを排気量として簡易計算を行っている。e-POWERシステムはエンジンの駆動力ではないため、厳密には定義とは異なるのだが、簡易計算手法として使用した。
また、GRヤリスとノートe-POWER NISMO Sの他にも、国産スポーティカーの代表例として、スイフトスポーツ、シビックタイプR、WRX STI、スカイライン400Rも計算した。「グラフ1」を参照してほしい。
GRヤリスの最大BMEP 28.7も驚異的なのだが、NISMO Sは33.5と、更に上回っている。
NISMO Sはモーターがもつ瞬時に立ち上がるトルク特性によって、アクセルペダルの踏み始めから、驚くほどのゼロスタートの加速を決めることができる。
実際に、NISMO Sへ試乗した印象もこの通りで、エンジン駆動のように、エンジン回転数が上がるにつれて伸びていくような印象はないが、非常に力強く、そして速い。
簡易計算方法とはいえ、NISMO Sの異様さがお分かりいただけるであろう。
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