自動車各社3月決算発表遅れに、2020年度見通し不透明で厳しく
自動車各社の上場企業は、例年4月末から5月の連休明けに前期(2020年3月期)決算を発表するスケジュールとなっているが、この4月からの2021年3月期業績予想がコロナ禍の影響がどの程度になるか、見通せない状況に苦慮している。
この本決算発表には、各社ともに社長が出席して前期業績と今期予想を説明するが、今期がコロナ禍の収束が見えないだけに難しい情勢なのだ。第3四半期(10〜12月)決算発表した2020年1月時点では、トヨタの増収増益だけが目立った。
ちょうど、中国・武漢の新型コロナが表面化した時期だっただけに中国事業依存度が高い日産とホンダが「中国が見極められない」としていたが、それでも業績見通しは厳しいものだった。
また、インドで圧倒的な販売シェアと収益力を持つスズキもインドの金融不安にともなう新車市場の低迷から減収減益となるなど、マツダ、スバル、三菱自などもおしなべて厳しい業績見通しを発表していたのだ。
これにコロナ禍の世界拡大が追い打ちをかける恰好となり、1〜3月の第4四半期を加えた前期(2019年度)よりも今期(2020年度)の4月以降のコロナ禍終息が長引けば長引くほど生産・販売減の業績低下に影響を与えることになる。
1強のトヨタといえども今期業績はコロナ禍による生産・販売減少が続くと大幅な悪化は避けられなくなりそうだ。
3月の国内新車販売のコロナ禍影響はまだ軽微だが4月以降に懸念
日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽協)が発表した2020年3月の新車登録・新車届出及び2019年度実績を見ていきたい。
まず、2020年3月の新車販売(軽自動車含む)は、前年同月比9.3%減の58万1438台となった。これは6ヵ月連続の減少だが新型コロナの影響で多少、客足が鈍ったものの大幅減少には至らなかった。
このうち、登録車は10.2%減の37万4955台。トヨタ新型ヤリス、ホンダ新型フィットと量販車の投入効果もあり、前年の3月に比べ1割減にとどめた。
軽自動車は、7.6%減の20万6438台となり、軽もハスラーやN-BOXの新型車が押し上げて20万台ラインをキープした。
一方、2019年度(2019年4月〜2020年3月)の新車販売総数は、503万8727台、4.2%減と年度500万台を確保した。
このうち、登録車は318万2760台、4.6%減。軽自動車は185万5967台、3.5%減となった。
2019年度の新車販売ランキングは1位ホンダN-BOX、2位ダイハツタント、3位スズキスペーシア、4位日産デイズ、5位ダイハツムーヴ、6位トヨタカローラ、7位トヨタプリウス、8位トヨタシエンタ、9位日産ノート、10位トヨタルーミーとトップ5は軽自動車が独占した。
例年3月は販社も決算月であり、年度末商戦で追い込みをかけるのだが、国内でもコロナ感染拡大が日を追うごとに強まり、週末の客足が鈍って盛り上がりに欠けたのが実態だ。
100年の大変革と危機に立ち向かうには「新車購入補助金」を投入すべき
問題は、4月以降の新年度であり、自動車各社の生産休止が納車遅れにも繋がり、まず4月の新車市場が9割減という大幅な減少の懸念も生じている。
「緊急事態宣言」の発令で、東京など対象都府県の販社はとくに苦慮することになる。また、今期の新型車投入も計画からずれ込む動きも予想される。すでに日産は米国での新型車投入を遅らすことを表明している。
日本の緊急事態宣言が5月連休明け以降どうなるかだが、少なくとも4〜6月のいわゆる第1四半期は、国内販売のみならず世界市場での大幅な落ち込みは、避けられないだろう。
自動車業界は、おりしも「100年に一度の大変革期」を迎えており、CASE・MaaS対応へ次世代技術での世界競争にさらされている。このコロナ禍をクリアして日本の自動車産業・業界の生きる道が求められているのだ。
すでに中国が生産再開の中で政府・自治体による新車購入補助金の政策を展開してきたように、日本も改めて、こうした緊急対策をするなど、クルマ市場の活性化への方策が求められる。
※ ※ ※
最後に2020年4月7日現在、各メーカーから発表されている国内自動車生産の調整計画を紹介しておこう。
各社の生産調整計画を見ると、人気車のなかで生産調整が行われないのはヤリス、アクア、シエンタ、フィット、N-BOX、逆に生産調整が行われるのは、カローラ、プリウス、ノート、セレナ、ロッキー&ライズ、ハスラー、ジムニー、タントとなっている。
こうした生産調整によって納期が延びることにはならないのか、また、これから出る新型車のデビュースケジュールが変更されないのか、今後も注視していきたい。
■自動車各社の国内自動車生産の調整計画
※各社のプレスリリースから抜粋
■トヨタ
●高岡工場 第1ライン 4/3~7の3稼働日。生産車種:ハリアー、カローラ
●堤工場 第1・2ライン 4/3~7の3稼働日。生産車種:プリウス、プリウスPHV、カムリ、プレミオ、アリオン、カローラスポーツ
●田原工場 第1ライン 4/3~10の6稼働日。生産車種:LS、IS、GS、RC、NX、ランドクルーザー、4ランナー、各種エンジン
●田原工場 第3ライン 4/3~14の8稼働日。生産車種:第一ラインと同じ
●トヨタ自動車九州 第1ライン 4/3~15の9稼働日。生産車種:ES、CT、RX、NX、UX、エンジン、ハイブリッド用部品
●日野自動車羽村工場 第1ライン 4/3~6の2稼働日。生産車種:ランドクルーザープラド、ダイナ/トヨエース
※トヨタ自動車およびトヨタグループをあげて医療現場と医療物資の支援を発表(4/7)
■日産
●追浜工場 4/3、4/13、4/24、5/1の車両生産停止。生産車種:リーフ、シルフィ、ノート
●栃木工場 4/6~10、4/13~17、4/20~22、5/1の車両生産停止。生産車種:シーマハイブリッド、フーガハイブリッド、フーガ、スカイライン、GT-R、フェアレディZ。海外向けはインフィニティ各車種、370Z
●日産自動車九州 4/2~3、4/6~10、4/13~17、4/20~24、4/27~30の夜勤での車両生産停止(昼勤のみ稼働)、5/1の車両生産停止。生産車種はセレナ、エクストレイル、海外向けローグ、ローグスポーツ
■ホンダ
●埼玉製作所狭山工場完成車ライン 4/16~17(2稼働日)。生産車種:ステップワゴン、オデッセイ、ジェイド、レジェンド、クラリティPHEV、クラリティフューエルセル
●熊本製作所二輪完成車ライン 4/13~14(2稼働日)
■マツダ
●本社工場および防府工場 3/28~4/30までの間、13日間の操業を休止。8日間は昼勤のみ稼働
本社工場生産車種:ガソリンレシプロエンジン、自動車用手動変速機
宇品工場第一生産車種:CX-3、CX-30、CX-5、CX-8、CX-9、ロードスター、ボンゴ、フィアットクライスラー向けスポーツカー
宇品工場第二生産車種:CX-5、レシプロガソリンエンジン、ディーゼルエンジン
防府工場第一生産車種:マツダ2、マツダ3、CX-3
防府工場第二生産車種:マツダ6、CX-5
■スバル
●群馬製作所本工場および矢島工場(完成車工場)、大泉工場(エンジン・トランスミッション工場)
停止期間 :4 /9~5/1(4/9 ~11、4/13~18、4/20~24、4/27~5/1) ※ 記載のない日は、土曜日曜など元々休業日。停止日数 :19 日間 (稼働日ベース)。操業再開予定 :5/11(5/2~10は長期連休期間)
群馬製作所・本工場生産車種:レヴォーグ、インプレッサ、XV、WRX、BRZ
矢島工場生産車種:レガシィ、インプレッサ、XV、フォレスター
■三菱
●水島製作所第1組立ライン(軽自動車) 3/27~4/14
●水島製作所第2組立ライン(登録車) 4/6~4/23
水島製作所生産車種:RVR、i-MIEV、ekワゴン、eKクロス、ekスペース、ekクロススペース
●岡崎製作所組立ライン 4/9~4/17
岡崎製作所生産車種:アウトランダーPHEV、アウトランダー、エクリプスクロス
●パジェロ製造(株)組立ライン 4/13~4/30
パジェロ製造(株)生産車種:デリカD:5、海外向けパジェロ
※4月8日、水島(岡山)、岡崎(愛知)両製作所と子会社のパジェロ製造(岐阜)の完成車3工場で働く最大6500人を対象に一時帰休を始めた
■スズキ
●全工場(湖西工場、磐田工場、相良工場、大須賀工場、浜松工場)および国内製造子会社 4/1~3の3稼働日。4/6以降も操業を一部停止。
●主力の湖西工場(四輪) 4/9、4/10、4/17の操業停止。生産車種:アルト、スペーシア、ワゴンR、ハスラー、ジムニー
●磐田工場 4/9、4/10、4/17、4/18の操業停止。生産車種:エブリイワゴン、エブリイ、キャリイなど
●相良工場 4/6~17まで交代勤務から1勤へ変更。生産車種はイグニス、スイフト、ソリオ、クロスビーおよびエンジン組み立てなどを行う
●浜松工場(二輪車生産)および湖西工場(船外機) 4/10の操業を停止、それ以外も交代勤務から1勤へ変更
●鋳造部品の製造などを行う大須賀工場 4/10の操業を停止、4/9および4/17は一部操業。4/20以降の工場操業については、状況などを見極めた上であらためて判断
■ダイハツ
●滋賀(竜王)第二工場 4/13~21(7稼働日)。他工場は稼働予定。生産車種:ロッキー&ライズ、タント、ムーヴキャンバス
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