毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ ターセル/コルサ/カローラII 3ドア リトラ(1986-1990)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:TOYOTA
■ターセル コルサ カローラII「3兄弟」に投入 リトラクタブルライトのハッチバックモデル
1980年代のバブル景気を背景に、シンプルな小型FF車だったトヨタ ターセル/コルサ/カローラIIの3兄弟は、3代目へのフルモデルチェンジ時に(※カローラIIは2代目へのチェンジ)、「ボーイズレーサー」とでも呼ぶべきリトラクタブル・ヘッドライト仕様を3ドアハッチバック版に追加。
それが、今回ご紹介するターセル/コルサ/カローラIIの「3ドア リトラ」です。そしてなかでも極めつけが、「リトラGPターボ」というホットグレードでした。
1986年5月に発売された3代目ターセル/コルサおよび2代目カローラIIの主力は、オーソドックスなデザインの3/5ドアハッチバックでした。
しかし「3ドア リトラ」というスポーティグレードだけは、その名のとおりリトラクタブル・ヘッドライトを採用。
どことなくAE86トレノのような、あるいは翌1987年に登場することになるAE92トレノを予感させる造形となりました。
3兄弟の3ドア リトラが搭載したエンジンはごく普通の1.5L SOHCでしたが、1985年9月のプラザ合意を受けてイケイケの好景気が始まっていた日本では、そのデザインが若衆に注目され、3ドア リトラはそれなりのヒット作に。
そして通常の3ドア リトラから遅れること4ヵ月、1986年9月には過給圧切り替え式ターボエンジンを搭載したホットトグレード「3ドア リトラ GPターボ」が追加されました。
GPターボに採用されたエンジンは新開発の3E-TE型。EP71型スターレットターボに搭載された2E-TE型のストロークを延長して1.5Lにしたもので、デュアルインテークの3バルブSOHCや空冷インタークーラー、2モードのターボシステムなどを2E-TEから踏襲。
パワー&トルクは通常モード時が110ps/17.2kg-mで、Loモード時が97ps/15.2kg-mでした。
足回りもGPターボ専用にチューンされ、4輪ディスクブレーキや185/60R14のタイヤもGPターボ専用の装備。
また「スポーツパッケージ」では、TEMS(トヨタ電子制御サスペンション)と新プログレッシブパワーステアリングを選択することもできました。
そういった車台よりエンジン出力が勝っていたGPターボはいかにも80年代らしい「じゃじゃ馬」でしたが、そこが逆に当時のユーザーの心に刺さったのか、それなりの人気車種にはなりました。
しかし1990年にターセル/コルサが4代目に、そしてカローラIIが3代目へとフルモデルチェンジされる際に、3ドア リトラおよびそのGPターボはカタログから消滅。
「リトラクタブル・ヘッドライトを採用したターセル3兄弟」は、この1代限りで生産終了となったのです。
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