■人気車種となりながらも消えた理由
トヨタ ターセル/コルサ/カローラIIという3兄弟の3ドア リトラおよびGPターボが生産終了となった理由。それは端的に言ってしまえば「ホットハッチブームが終わったから」でしょう。
1980年代はさまざまなホットハッチが世界中の車好きを、特に、比較的若い世代の自動車愛好家を魅了しました。
1970年代末期に登場した初代フォルクスワーゲン ゴルフGTIを皮切りに、日本ではホンダ シティターボおよびシティターボII(通称ブルドッグ)、ダイハツ シャレード デ・トマソ、トヨタ スターレット ターボS等々、挙げていけばキリがないほどのホットハッチが登場し、それぞれ人気を博していました。
そして1990年代に入ってからも三菱ミラージュ サイボーグRやトヨタ カローラFX GTスーパーストラット等々のホットハッチは登場したわけですが、そこに80年代ほどの「勢い」はありませんでした。
なぜホットハッチというジャンルが廃れたのか、正確なところはわかりません。しかしひとつ考えられるのは、80年代後半の世の中は異様な好景気に基づくジャブジャブの緩和マネーが、一般庶民のもとにも(ある程度)行き渡っていました。
それゆえ、「どうせ高性能な車を買うなら、ハッチバックじゃなくてもっと立派なやつを!」と、多くの人が思い始めたからなのかもしれません。
まぁこれはひとつの推論に過ぎませんが、いずれにせよトヨタは、時代の先を読んでいたのか、それとも「たまたま」だったのかは知りませんが、良い判断をしました。
ターセル/コルサ/カローラIIの3ドア リトラおよびそのGPターボは1990年をもって販売終了となったわけですが、ご存じのとおりその後、いわゆるバブルは崩壊し、日本では1992年頃に景気低迷のピークを迎えたからです。
もしもそのその頃にも「ホットハッチ」の製造と販売を行っていたら、会社にとってはけっこうな「お荷物」になっていたことでしょう。
以上のような流れで3兄弟のリトラクタブル系ハッチバックは廃番となったわけですが、この1980年代丸出しなデザインは、最近の若者(の一部)にはけっこう好まれるような気もします。
それゆえ、もしも状態良好な中古車が残っていればけっこう面白いのでは……と思ったのですが、筆者が調べた限りでは、リトラ系3兄弟の現在の中古車流通は「ゼロ」でした。
残念ですが、完全に絶滅してしまったようですね。
■トヨタ カローラII リトラGPターボ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3910mm×1635mm×1370mm
・ホイールベース:2380mm
・車重:910kg
・エンジン:直列4気筒SOHCターボ、1456cc
・最高出力:110ps/5600rpm
・最大トルク:17.2kgm/3200rpm
・燃費:14.8km/L(10モード)
・価格:124万2000円(1988年式リトラGPターボ 5MT)
コメント
コメントの使い方