エルグランドのもうひとつの敗因は「燃費」
そして、エルグランドのもうひとつの弱点が、燃費の悪さである。
エルグランドの3.5L・V6の燃費は9.4km/L(JC08モード)、2.5L直4は10.8km/Lだ。いまやミニバンでもハイブリッド車であれば、15km/Lを余裕で超えてくる時代である。
アルファードの2.5Lハイブリッドは、JC08モードで18.4km/L(WLTCで14.8km/L)を達成しており、このレベルを実現できるパワートレインでないと、勝負にならない。
日産には、スカイラインやフーガに搭載されている3.5L・V6ハイブリッドや、エクストレイルに搭載されている2.0L直4のハイブリッド、そしてセレナに搭載のe-POWERがある。
エルグランドに2.0L直4ハイブリッドを搭載して出すことはできるはずだが、開発予算に余力がないのであろう。
エルグランドは復権できるのか?
筆者は「復権できる!」と考えている。現時点で筆者が考える「新生エルグランド」の車両概要は以下の通りだ。
まず、「エルグランド」の名に恥じない風格をもったボディスタイルは必須だ。
全高を上げ、見栄えを豪華に、そしてインテリアにも、「アリアコンセプト」で夢を見せてもらったような、センスが良く、贅を尽くしたものを用いてほしい。
プロパイロットや、その他の先進安全技術は必須であり、あえて指摘するまでもなく搭載してほしい。
パフォーマンスを優先する上級グレード用のパワートレインには、アルティマやインフィニティQX50に搭載されている、VCRエンジンが最適だろう。
VCRエンジンは、直4でもV6に近い振動レベルを達成でき、なおかつパフォーマンスが欲しいとき、または燃費を優先したいときに、圧縮比を自在にコントロールできる「日産固有の新兵器」だ。これを使わない手はない。
ハイブリッドシステムは、その複雑さゆえにコストが高く、なかなか手を出しにくい。「燃費向上分とのバリューを考えると、このVCRユニットのほうが、ハイブリッドよりずっと良い」というのが日産エンジニアから聞いた見解である。
量販グレードにはe-POWERの搭載を!
そして、量販グレード用にはe-POWERだ。以前筆者が『ベストカーWeb』で、書かせていただいた記事で、現時点のe-POWER(セレナ用 1.3L直3エンジン)では、エルグランドの車重に対してパフォーマンスが不足すると指摘させていただいた。
だが、日産は、可変圧縮比(VCR)エンジンの採用領域を拡充することをアナウンスしており、「e-POWER」にも活用する方針だ。発電効率が良くパワフルなパワートレインが登場すれば、高価なハイブリッドシステムを用いずとも、燃費改善およびCO2排出量低減が見込める。
そして、何より大切なのが、「エルグランドに手をかけ続ける」ことだ。何年間も放置すると、ファンの心は離れていく。現行エルグランドのような姿は2度と見せてはならないと思う。
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ただ、「背の低さ」や「燃費の悪さ」だけがエルグランドの敗因ではないだろう。アルファードが強い理由は、トヨタ販売網の圧倒的な強さも後押ししたことは間違いない。
そのため、エルグランドの復権には、販売面での工夫も必要だと考える。
「走りへの強いこだわり」がエルグランドの魅力と考えるのは悪くはない。
ただし、初代エルグランドを彷彿させる「背高のミニバン」で、ラージミニバンナンバー1の走りを実現する技術を目指すのが「日産らしさ」だし、そうした姿になってくれることを、筆者は願っている。
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