日産エルグランド なぜ衰退? 元祖高級ミニバン復権の可能性

エルグランドのもうひとつの敗因は「燃費」

高級ミニバンにおいて走りの実力はピカイチながら、ハイブリッド等はなく、燃費面では厳しいのが現状だ

 そして、エルグランドのもうひとつの弱点が、燃費の悪さである。

 エルグランドの3.5L・V6の燃費は9.4km/L(JC08モード)、2.5L直4は10.8km/Lだ。いまやミニバンでもハイブリッド車であれば、15km/Lを余裕で超えてくる時代である。

アルファードの2.5Lハイブリッドは、JC08モードで18.4km/L(WLTCで14.8km/L)を達成しており、このレベルを実現できるパワートレインでないと、勝負にならない。

 日産には、スカイラインやフーガに搭載されている3.5L・V6ハイブリッドや、エクストレイルに搭載されている2.0L直4のハイブリッド、そしてセレナに搭載のe-POWERがある。

 エルグランドに2.0L直4ハイブリッドを搭載して出すことはできるはずだが、開発予算に余力がないのであろう。

エルグランドは復権できるのか?

今年か2021年にも発売される見込みのアリア コンセプト。ここで具現化される新生日産デザインを生かした次期エルグランドに期待したい

 筆者は「復権できる!」と考えている。現時点で筆者が考える「新生エルグランド」の車両概要は以下の通りだ。

 まず、「エルグランド」の名に恥じない風格をもったボディスタイルは必須だ。

 全高を上げ、見栄えを豪華に、そしてインテリアにも、「アリアコンセプト」で夢を見せてもらったような、センスが良く、贅を尽くしたものを用いてほしい。

 プロパイロットや、その他の先進安全技術は必須であり、あえて指摘するまでもなく搭載してほしい。

 パフォーマンスを優先する上級グレード用のパワートレインには、アルティマやインフィニティQX50に搭載されている、VCRエンジンが最適だろう。

 VCRエンジンは、直4でもV6に近い振動レベルを達成でき、なおかつパフォーマンスが欲しいとき、または燃費を優先したいときに、圧縮比を自在にコントロールできる「日産固有の新兵器」だ。これを使わない手はない。

 ハイブリッドシステムは、その複雑さゆえにコストが高く、なかなか手を出しにくい。「燃費向上分とのバリューを考えると、このVCRユニットのほうが、ハイブリッドよりずっと良い」というのが日産エンジニアから聞いた見解である。

量販グレードにはe-POWERの搭載を!

ノート、セレナに搭載され販売急増の立役者となったe-POWER。エルグランドに搭載されれば、大幅な燃費改善と訴求力アップが見込めるだろう

 そして、量販グレード用にはe-POWERだ。以前筆者が『ベストカーWeb』で、書かせていただいた記事で、現時点のe-POWER(セレナ用 1.3L直3エンジン)では、エルグランドの車重に対してパフォーマンスが不足すると指摘させていただいた。

 だが、日産は、可変圧縮比(VCR)エンジンの採用領域を拡充することをアナウンスしており、「e-POWER」にも活用する方針だ。発電効率が良くパワフルなパワートレインが登場すれば、高価なハイブリッドシステムを用いずとも、燃費改善およびCO2排出量低減が見込める。

 そして、何より大切なのが、「エルグランドに手をかけ続ける」ことだ。何年間も放置すると、ファンの心は離れていく。現行エルグランドのような姿は2度と見せてはならないと思う。

◆  ◆  ◆

 ただ、「背の低さ」や「燃費の悪さ」だけがエルグランドの敗因ではないだろう。アルファードが強い理由は、トヨタ販売網の圧倒的な強さも後押ししたことは間違いない。

 そのため、エルグランドの復権には、販売面での工夫も必要だと考える。

「走りへの強いこだわり」がエルグランドの魅力と考えるのは悪くはない。

 ただし、初代エルグランドを彷彿させる「背高のミニバン」で、ラージミニバンナンバー1の走りを実現する技術を目指すのが「日産らしさ」だし、そうした姿になってくれることを、筆者は願っている。

【画像ギャラリー】元祖高級ミニバン! 日産エルグランド 3代23年の歴史

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