プッシュ式・プル式それぞれの特徴
しかし問題は、高速コーナリング時に現れる。プッシュ式は操舵初期に力が入りやすく、結果として切りすぎを招く。舵角の立ち上がりが急になると、横Gも急激に発生し、体が外側へ持っていかれる。その状態では、さらなる切り増しが困難になる。
これはサーキット走行、特にハイグリップタイヤ装着車で顕著になってくる。切り増し遅れ、いわゆる「手アンダー」を誘発しやすくなってしまう。
一方、プル式では横Gそのものを操舵力として利用できる。左コーナーで左手を引き下げると、横Gは腕をさらに下方向へ引っ張る力として作用する。つまり、自身の腕の筋力ではなく、車両挙動を利用して舵角を増やすことができるのである。
連続するコーナーでプッシュ式を多用すると、上体が左右に振られ、背中(特にプッシュしている側の肩)がシートから浮きやすくなる。腕がメーターの視界を遮り、視線も内側へ固定される。その結果、対向車や歩行者といった不測の障害物への認知が遅れる。
重要なのは、どのような場面でも頭部を垂直に保ち、視野を広く維持することだ。これはサーキットでも一般道でも同じ。姿勢を保てる操作こそが、安全で速い。
【画像ギャラリー】ハンドルは引くのが正解なの? それとも押すのが正解なの? プロが徹底伝授クルマの挙動を決めるステアリング操作!(5枚)画像ギャラリー普段もサーキットも統一感が大事
操舵量が大きくなる場合、私はステアリングを左右二分割して考えることを勧めている。右半分は右手、左半分は左手の担当領域だ。プル式で6時まで引いた後、反対側の手は滑らせて待機し、必要に応じて押し上げる。これを交互に行うプッシュ・プル式は、ジムカーナ、ラリー、サーキットなどあらゆる状況に対応できる。
ただし注意したいのは、操作方法を途中で切り替えないことだ。日常はプッシュ式、サーキットだけプル式という使い分けは、緊急時に操作ミスを招く。操作は日常から身体に染み込ませておく必要がある。一般道や低速走行時でも、身体感覚として馴染ませておくことが咄嗟の操作に反映できるはずだから。
スムーズな運転とは、派手な操作ではない。姿勢が崩れず、視界が保たれ、操作が再現可能であること。その結果として、クルマは自然に、そして速く走るのである。
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