名車エスティマ復活を!! 「背の低いミニバン」がアルファードに勝てない理由

名車エスティマ復活を!! 「背の低いミニバン」がアルファードに勝てない理由

 高級ミニバンカテゴリーで盤石の強さを見せる、トヨタのアルファード/ヴェルファイア。

 最初から現在のような唯一無二の絶対的な存在だったわけではなく、日産エルグランド、同門トヨタのエスティマ、さらにはホンダのオデッセイのトップグレードなど、高級ミニバンカテゴリーにはアルファード/ヴェルファイアのライバルといえる存在が多数存在した。

 しかしご承知のとおり、いまや同分野はアルファード/ヴェルファイアの独壇場。なぜこのような状況になったのか。

 それほど強いのはなぜか。そしてこの状況はいつまで続くのか。緻密な分析で名高いカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏に分析していただいた。

文:渡辺陽一郎、写真:トヨタ、日産、ホンダ

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日本のミニバン市場の現状

 ミニバンは今でも人気の高いカテゴリーだ。日本国内で新車として売られるクルマの15%を占める。セダンの9%に比べると大幅に多い。

 今は軽自動車が売れ筋で、新車として売られるクルマの37%に達する。コンパクトカーも25%だが、これに次いで多いのがミニバンだ。人気急上昇中のSUVと比べても少し上まわる。

 そしてミニバンの中でも、特に目立って売れているのがLサイズのアルファード&ヴェルファイアだ。

アルファード 特別仕様車 S“TYPE GOLD”
アルファード 特別仕様車 S“TYPE GOLD”
ヴェルファイア 特別仕様車 Z“GOLDEN EYES”
ヴェルファイア 特別仕様車 Z“GOLDEN EYES”

 登録台数は、コンパクトなシエンタやフリード、ミドルサイズのセレナやヴォクシーの方が多いが、アル&ヴェルは価格が圧倒的に高い。

 直列4気筒2.5Lノーマルエンジンを搭載したアルファードSが390万8000円(7人乗り)、ハイブリッドSは後輪にもモーターを装着して4WDになるから479万9000円に達する。シエンタに比べると、ノーマルエンジン、ハイブリッドともに約2倍の価格設定だ。

 これだけ高価格なのに、2020年3月の登録台数は、アルファードが7885台、ヴェルファイアは2719台に達した。両姉妹車を合計すると10,604台だから、日産の最量販車ノートと同等になる。

 売れ筋価格帯が350万円以上の高価格車としては、もちろんナンバーワンの売れ行きだ。

ライバル車と比較すると

 そこで気になるのがライバル車の動向だろう。アル&ヴェルは全長が4800mm、全幅は1800mmを上まわるLサイズだから、同等の大きさのミニバンと比べたい。

 そうするとオデッセイは2020年3月の登録台数が1090台、エルグランドは399台と大幅に少ない。

 また以前はアル&ヴェルとプラットフォームを共通化したエスティマも選べたが、フルモデルチェンジを受けず、2006年に登場した3代目を約13年間造って、2019年末に廃止された。

 つまりLサイズミニバンでは、アル&ヴェルのみが好調に売れて、それ以外の車種はすべて低調だ。その理由を探りたい。

オデッセイハイブリット(5代目・2017マイナーチェンジ)
オデッセイハイブリット(5代目・2017マイナーチェンジ)

 オデッセイの売れ行きは、アル&ヴェルの約10%と少ないが、商品力は高い。すべてを決定付けたのは床の高さだ。アル&ヴェルの床面地上高は450mmと高く、オデッセイは低床プラットフォームの採用で340mmと低い。

 そのためにアル&ヴェルはサイドステップ(小さな階段)を介して乗り降りするが、オデッセイなら路面から直接足が床に届くから乗降性が良い。

 床の高さの違いは、3列目シートの着座姿勢にも影響を与えた。アル&ヴェルは床が高いから、3列目は床と座面との間隔が不足して、足を前方に投げ出す座り方になりやすい。

 左右に跳ね上げて格納するから、座り心地も柔軟性が乏しい。頭上と足元の空間は広いが、3列目の座り心地は、1/2列目に比べて大幅に劣る。

 その点でオデッセイでは、床と座面の間隔に不足はなく、着座姿勢がアル&ヴェルに比べて自然な印象だ。オデッセイの3列目は床下格納だから、座り心地もアル&ヴェルの3列目より少し柔軟に仕上がった。3列目の座り心地は、アル&ヴェルよりもオデッセイの方が快適だ。

 この低床設計を生かして、オデッセイは全高を1685mm(アブソルート)に抑えている。アル&ヴェルの1935mm(ノーマルエンジン車)に比べると250mm低いが、オデッセイは床の高さも140mm下まわるから、室内高は75mmしか違わない。

オデッセイの外観は、ワゴン風で天井が低く見えるが、低床設計だから室内高には意外と余裕がある。車内が窮屈には感じにくい。
オデッセイの外観は、ワゴン風で天井が低く見えるが、低床設計だから室内高には意外と余裕がある。車内が窮屈には感じにくい。

 そしてオデッセイは天井と床が両方ともに低いから、ミニバンとしては重心が低く、アル&ヴェルよりも走行安定性が優れる。乗り心地はアル&ヴェルも快適だが、峠道などを走ると、オデッセイであればボディが左右に振られにくく不快感も少ない。

 つまりクルマの床と天井の高さは、必要な最低地上高と室内高が確保されているなら、低いほど良いのだ。乗降性と居住性が優れ、低重心になって車両重量も軽くなるから、走行安定性、動力性能、乗り心地も向上する。

 天井が低ければ空気抵抗も減るから、燃費も良くなる。逆に床と天井を高めて得られる機能的なメリットはひとつもない。

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