小さなクルマに乗り替える人続出! なぜ今ダウンサイザーなのか?

小さなクルマに乗り替える人続出! なぜ今ダウンサイザーなのか?

 ダウンサイジングという言葉を聞いたことがあるだろうか? 

 NAエンジンを小排気量化したうえでターボを装着し、燃費や環境性能を向上させる、ダウンサイジングターボがここ数年で世界的に流行しているが、これは「エンジンのダウンサイジング」と呼ばれている。

 そしてもう1つ、現在、日本において急速に進んでいるのが、小さなクルマに乗り替える「ダウンサイジング」だ。

 こうした、ミドルクラスやLクラスのクルマから、小さなクルマに乗り替えるユーザーのことを「ダウンサイザー」と言う。

 ダウンサイザーの中心は50代以上だが、2020年2月に発売された新型フィットとヤリスの購入ユーザー層を見ると、その傾向が顕著に表われている。

 フィットは50代が26%、60代以上が47%でなんと全体の73%が50代以上なのだ。新型ヤリスも同様の傾向で、50代が20%、60代が50%と全体の70%を50代以上が占めている。

 そこで、なぜ今、小さなクルマに乗り替えるダウンサイザーが急激に増えているのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】ダウンサイザーなクルマの購入ユーザー層&人気グレードは?


ダウンサイザーは50代以上が中心

1984年8月にデビューしたGX71マークII。かつてはカローラを買えば、次はコロナやカリーナ、そしてマークⅡ、クラウンへと買い替える度にステップアップしていったが現在はそれが当てはまらない
1984年8月にデビューしたGX71マークII。かつてはカローラを買えば、次はコロナやカリーナ、そしてマークⅡ、クラウンへと買い替える度にステップアップしていったが現在はそれが当てはまらない

 クルマ用語のひとつに、小さなクルマに乗り替える「ダウンサイジング」がある。

 1990年頃までは、年齢と所得が高まるに連れて大きなクルマに乗り替える「アップサイジング」が多かったが、今はダウンサイジングが話題になる。

 ユーザーの気持ちとして、アップサイジングは分かりやすい。若い頃は小さくて価格の安いクルマで十分だが、結婚して子供ができれば、家族全員で快適に乗車できる機能が必要になる。

 中高年齢層になって所得が増えれば、今までとは違う高級車にも乗りたいだろう。生活環境の変化に応じて、選ぶクルマのカテゴリーも変わり、アップサイジングするのは自然な買い方に思える。

 一方、ダウンサイジングは、クルマの乗り替えとしてはUターンだ。運転免許を取得した直後は小さなクルマに乗り、生活環境の変化に応じてアップサイジングする。

 ここまでは前述の通りだが、今はUターンして、再び小さなクルマに戻るユーザーが増えた。

 この変化が生じた背景には、複数の理由がある。まず以前に比べて高齢ドライバーが増えたことだ。定年退職すれば所得も減る。

 子供は既に独立しているから、車内の広いクルマはもはや必要ない。遠方への外出に公共の交通機関を使うなら、燃費が優れ、価格も割安な小さなクルマに乗り替えた方が合理的だ。

 高齢ドライバーの増え方は、運転免許保有者の年齢分布を見ると分かりやすい。2009年の時点では、75歳以上の運転免許保有者は283万人だった。それが2019年には583万人に増えたから、わずか10年間で2倍以上になった。

 65歳以上の運転免許保有者数は、2019年は1885万人だ。保有者全体の23%が65歳以上で占められる。

 今のように高齢ドライバーが増えた一番の理由は、第一次ベビーブームで誕生した団塊の世代(1947年から1949年頃に生まれた人達)を中心に、高齢者の人口が多いためだ。日本の人口の32%が65歳以上だから、当然に高齢ドライバーも増える。

 しかも団塊の世代が20歳になった1967年から1969年は、高度経済成長期にあたり、所得が増えてクルマの売れ行きも伸びた。

 1967年にはトヨタ2000GT、3代目(510型)日産ブルーバード、ホンダN360。1968年には初代トヨタコロナマークII、3代目日産プリンススカイライン。1969年には初代日産フェアレディZ、ベレット1600GT-Rなどが発売された。

 1970年には初代トヨタセリカ、初代日産チェリー、三菱ギャランGTOなども登場して、若い人達の購買意欲を刺激した。

 そこで団塊の世代は積極的に運転免許を取得して、それまで日本にほとんど存在しなかった若年ドライバーが急増している。

 1980年代はまさにアップサイジングの時代だった。新車を買い替える度にクラスがアップしていき、マークII三兄弟やクラウンがよく売れた。

 クルマの売れ行きも増えて、1990年に国内販売は778万台のピークを迎えた。この需要を牽引したのも、当時40代の働き盛りだった団塊の世代だ。

 つまり現時点で70代になる団塊の世代は、50年前には若年ドライバーの先駆けで、今は高齢ドライバーの実質的に最初の世代になる。

 したがってダウンサイジングも、団塊の世代が高齢になって、初めて生まれたムーブメントだ。小さなクルマに乗り替えるのは、消極的な消費行動だが、団塊の世代は人口も多いからメジャーな流れになった。

■1987年の年間販売台数TOP5
1位:カローラ/27万5019台
2位:マークII/19万3282台
3位:シビック/17万1270台
4位:クラウン/16万536台
5位:カリーナ/15万2942台
※参考:1987年3月のマークII3兄弟の販売台数はマークIIが2万5514台、クレスタが1万1556台、チェイサーが7523台、合計4万4593台

■2019年の年間販売台数TOP5
1位:プリウス/12万5587台
2位:ノート/11万8472台
3位:シエンタ/11万880台
4位:カローラ/10万4406台
5位:アクア/10万3803台
※参考:直近の最新データ、2020年3月の販売台数は、1位がカローラで1万6327台、2位フィットが1万4845台、3位がヤリスで1万3164台、4位がライズで1万2009台、5位がノートで1万999台

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