クルマの価格が値上げされたのも原因
ダウンサイジング化が進む背景には、高齢ドライバーの増加に加えて、クルマの値上がりもある。
例えば2001年に発売された初代フィットの価格は、売れ筋の1.3Aが5%の消費税を加えて120万2250円だった。
それが現行型は最も安い1.3ベーシックが10%の消費税を含めて155万7600円だ。約35万円値上げされ、比率に換算すると1.3倍になった。
同じく2001年に発売された初代ノアは、売れ筋の2.0X・Gエディションが5%の消費税を加えて208万9500円だ。
現行型はベーシックな2.0X(8人乗り)が10%の消費税を含めて255万6400円になる。約47万円値上げされ、比率に換算すると1.2倍だ。
2000年に発売されたエクストレイルは、4WD・2.0Sが5%の消費税を加えて210万円だった。
現行型は4WD・2.0・20Sが10%の消費税を含めて248万2700円だから、約38万円値上げされた。比率に換算すると1.2倍だ。
このようにクルマの価格を現在と20年で比べると、安全装備の充実、環境性能の向上、消費増税などにより1.2~1.3倍に値上げされた。
車種によっては1.5倍に達する。今のクルマの安全装備や環境性能の充実は目覚しく、値上げ以上の価値を加えたから現行型が割安ともいえるが、単純に比較すれば値上げされている。
その一方で平均所得は1990年代の後半をピークに減り、直近では若干増加したが、20~25年前の水準には戻っていない。
要は所得が減ってクルマは値上げされたから、新車に乗り替える時にサイズを小さくするユーザーが増えた。高齢者に限らず、いろいろなユーザーの間でダウンサイジングが進んでいる。
コンパクトカーは60歳以上が全体の半数を占める
それでもコンパクトな車種を購入した人の年齢構成比を見ると60歳以上が多い。ヤリスは50%、フィットは47%、ライズでは25%が60歳以上で、ノートも比較的高齢だ。
例えば、フィットに関しては、従来型から乗り替えたユーザーは60%で、残りの40%は別の車種からになる。後者にはオデッセイのような上級車種からのダウンサイジングが目立つ。
ホンダの販売店からは次の話が聞かれた。
「ダウンサイジングする中高年齢層のお客様は、上級車種から乗り替えるため、コンパクトなフィットでも上質な内容を求める。そのためにハイブリッドの人気が高い。燃費の節約だけでなく、モーター駆動による滑らかで静かな加速が、ダウンサイジングするお客様から支持されている」。
上級車種から乗り替えの高齢者ユーザーはハイブリッドを選ぶ
そこでコンパクトカーのハイブリッド構成比を見ると、フィットは72%、ヤリスは45%、ノートはe-POWERが60~70%に達する。
コンパクトカーはNAエンジンの燃費も優れているから「ハイブリッドとNAエンジンの価格差を燃料代の節約で取り戻すには、どの程度の距離を走れば良いか」という計算を行うと、11万~15万kmの走行が必要だ。
1年間の走行距離が5000km前後では、ハイブリッドとの価格差を取り戻すことは不可能だが、それでもハイブリッドを選ぶユーザーが多い。経済性ではなく、滑らかで静かな走りに上質な魅力を感じるからだ。
このような経緯でフィットのハイブリッド比率は72%と高く、グレード構成比も内装の上質なホームが45%を占める。
そしてホームを購入したユーザーの51%が50歳以上だ。ライズも最上級グレードのZが高人気で68%を占める。
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