初心者と高齢者は同じ!? 来年70歳を迎えるプロが突きつける!! 高齢ドライバー問題の本質

日本の交通が抱える根本的な問題

都市部はとくに急かされるような構造となっているため、理性を保ちつつ「制限速度」の意味もきちんと理解しておく必要があるだろう
都市部はとくに急かされるような構造となっているため、理性を保ちつつ「制限速度」の意味もきちんと理解しておく必要があるだろう

 特に日本の都市部では、止めては走らせ、また止めるという信号の制御が非常に多い。車間を空けて空いた状況を作り安全確保を図りながら走っても、信号でまた周囲の車と密集させられてしまう。さらに、一部では速度超過で走ると連続青信号で通過できてしまう道路設計すら存在する。

 つまり、急ぐ者が得をするような道路環境が潜在的に形成されているのだ。それを抑える理性を持てるかどうかはドライバーとしての資質なのだ。これは年齢とは関係ない。ルール、モラル、マナーを守れない人間は本来ハンドルを握るべきではない。

 そのうえで、高齢ドライバーにとって最も重要なのは「速度を落とす」という基本動作である。一般道の制限速度40、50km/hという数字は常にその速度で走れという意味ではない。あくまで条件が整った場合の上限速度にすぎない。

 雨天、夜間、歩行者の多い住宅街、視界の悪い交差点、歩道と車道が近接している道などといった環境では、30、20km/h、あるいはそれ以下まで落とす必要もある。

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初心者に「回帰」する高齢者ドライバーたち

能力の低下は、成熟も同時に下がっていることを意味する。運転に不慣れな者に起きがちなコトが高齢ドライバーにも起きてしまうのだ
能力の低下は、成熟も同時に下がっていることを意味する。運転に不慣れな者に起きがちなコトが高齢ドライバーにも起きてしまうのだ

 速度を落とすという行為は、認知・判断・操作すべてに余裕を生む。視野、視認時間が増え、速度が遅ければ遅いほど制動距離は比例して短くなる。危険回避操作にも余裕が生まれる。高齢ドライバーに限らず、これはすべてのドライバーに共通する基本原則だ。 ヨーロッパへ行くと、歩行者空間と車道は明確に分離されている。歩行者のそばを高速で通過すること自体が強いモラル違反として認識される。

 しかし日本では人とクルマの距離が近すぎる。狭い生活道路を大型SUVが走り抜ける光景はある意味異常だ。これはドライバー個人だけの問題ではなく、道路行政や都市設計、自動車社会全体の成熟度にも関わる問題である。

 そしてもうひとつ重要なのは、「高齢者=危険」という単純な話ではないということだ。ペーパードライバー、サンデードライバー、長期間運転していない、経験の浅い初心者などもまた、認知・判断・操作能力が十分に成熟していない。つまり、高齢による能力低下とは、未熟さへの回帰に近い現象であるとも言えるだろう。

 本来、クルマ社会は能力差があることを前提に構築されるべきなのだ。ところが現代の自動車開発は、より速く高性能に、という方向へ偏りすぎていると感じている。もちろん技術進化は必要だ。しかし、本当に今求められているのは、高齢者に機能低下や未熟なドライバーの認知・判断・操作をどう補完するかという視点ではないだろうか。

次世代に必要なヒトに合わせる「技術」

最近のクルマは、危険を感知すればアラームなどで知らせてくれたり、運転支援として介入してくれたりといった機能が充実してきた
最近のクルマは、危険を感知すればアラームなどで知らせてくれたり、運転支援として介入してくれたりといった機能が充実してきた

 例えば現在の衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能は、全ユーザーに同じ制御を行っている。しかし今後はドライバー個々の特性を学習する段階へ進むべきだと考える。前車への接近傾向が強い人には早めに警告を出す。ブレーキ操作が遅れる人には強めに介入する。視線移動が少ない人には周囲確認を促す。

 つまり、人に合わせて安全機能が変化するクルマである。それこそが、本当の意味での次世代安全技術ではないだろうか。

 高齢ドライバー問題とは、単に免許返納を促す話ではない。人間の能力差や変化をどう受け止めるか。社会全体でどう支えるか。そして、自動車という存在を今後どの方向へ進化させるべきか。そこまで含めて考えるべき段階に日本のクルマ社会はすでに来ているのだ。

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