ポルシェEVが手本となるか?
その手本は、やはりポルシェが参考になる。ポルシェは今年、電気自動車(EV)のタイカンを発売する。タイカンは、2015年にミッション-Eの名で公表され、ポルシェはEVの開発を周到に進めてきた。
そこに新型コロナウィルスの世界的感染拡大が起きた。人の移動が制限され、経済が停滞したことにより、世界中に澄み切った青空が広がったのである。
それはまさしく地球本来の環境であり、世界各地から感嘆の声が上がった。そして、「元の世界へ戻りたくない」という思いが高まっている。
経済を再開し、なおかつ澄み切った青空を保つにはEVしかない。絶妙の時期にタイカンは販売されだすのである。
しかし、現状のタイカンは、エンジン時代のポルシェをEVに置き換えただけである。
日産が進めるクルマと生活の繋がり
いっぽう日産は、2010年にリーフを発売して以来、リーフ後のリチウムイオンバッテリーの活用を模索し続けてきた。
一つは、東日本大震災を契機に、EVから家庭へ電力を供給する「リーフ・トゥ・ホーム」の構築である。
二つめは、EVと電力網をつなげるスマート・グリッドという社会基盤の研究である。それによって電力の無駄を省き、発電所の数を減らす可能性も見えてくる。
つまり澄み切った青空の下をEVが走りながら、それが使う電力の需給制御にEVも加わり、経済発展の一助とすることである。これは再生可能エネルギーの有効活用にもつながり、わざわざ発電した電力を水素に転換して貯える必要もなくなる。
しかし残念ながら、タイカンを含め欧米や中国のEVはクルマとしての性能を追い求めるだけで、社会や経済への貢献に目が行き届いてない。日産の取り組みは、世界最先端にある。そこで、次期GT-Rである。
これからのスポーツカーはどうなる?
2012年に米国のテスラからモデルSが発売されて以来、EVであればポルシェのような高性能車と加速性能が変わらないことが明らかになった。
たとえば、0~100km/hを3秒前後で加速することが、EVなら造作もなくできてしまうのである。タイカンも、モデルSとは違うGTらしさをいかに発揮できるかを模索し続けてきたことだろう。
そこはGT-Rも同じだ。それでも、21世紀にGTを所有する意義がどこにあるかといえば、社会や経済を牽引する人たちがその責務に等しい価値をGTに感じ、世に誇れるかに掛かってくる。
たとえば豪邸に住むにせよ、それがエコハウスであるとか、災害に強いく近隣へ奉仕できる住宅であるかどうかが問われるのに通じる。
単に速かったり、加速がすごかったり、外観の造形が魅力的であったりするだけでなく、所有することが社会へも貢献するとなれば、ポルシェさえ超える存在になるかもしれない。
そのうえで、一般公道でGTの能力を存分に発揮できる機会は限られてくる。ドイツのアウトバーンも同様であろう。理由は、EVならではのバッテリーの特性と、充電網に関わる電力供給の無理が重なるからだ。クルマでの高速移動そのものが問い直される時代が来る。
これに対する回答を、実はポルシェはすでに用意しはじめている。エクスペリエンスセンターの展開だ。
単なるサーキット走行と違い、SUVを含めポルシェのあらゆる性能を満喫できる場所を、すでに世界7か所に設け、国内にも来年以降に千葉県の木更津に開設される予定だ。
ここを訪ねれば、アウトバーンのない日本でもポルシェの高性能を存分に堪能できる。
エクスペリエンスセンターの存在は、あたかも乗馬クラブのようなものといえるだろう。1886年にカール・ベンツがガソリンエンジン自動車を発明して以来、ことに20世紀に入ってからは馬車の時代が終焉を迎えた。
しかし、馬術と競馬は今日も存続している。そこに、将来的なGTやスポーツカー存続の姿が重なる。
クルマは今後、EVを自動運転化していくことで、健常者の乗り物から万人の移動手段へ価値を広げていくだろう。同時に、娯楽として人間の生き甲斐をもたらす姿も改めて問われるに違いない。
その象徴がGT-Rであることを期待するとともに、それが成れば、日本の自動車産業の誇りにもなっていくのである。
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