その「思い込み」、間違っています!
さらに厄介なのは、スライド状態になった後の処理である。ドリフト経験のない人ほど「カウンターステアを当てれば何とかなる」と考えがちだ。しかし実際にはカウンターは当てることよりも戻すタイミングのほうが何倍も難しい。戻し遅れれば反対方向へ振り返し、早く戻し過ぎればそのままスピンするかイン側に巻き込んでしまう。俗にいう「タコ踊り」。
これはヨーダンピングが収束していない状態であり、ステアリング操作とアクセルコントロールの双方が未熟であることを示している。本人は華麗に車を操っているつもりでも、周囲から見れば制御不能に陥った危険車両でしかない。運転技術とは、ただ滑らせることではない。滑りを適切にコントロールすることなのである。
エンジンの空吹かしも同様だ。信号待ちでアクセルを何度もあおり、レブリミッターまで回してエンジン音を響かせる。イキリアクセルとでも呼びたくなる行為である。しかし停止状態で空吹かししても速くなるわけでも性能が向上するわけでもない。
むしろ無負荷で高回転まで回し続ければエンジン各部への負担は増える。近年のエンジンは高性能とはいえ油圧、油温も水温も十分に上がっていない状態で高回転を多用することは決して望ましい使い方ではない。騒音だけを周囲へまき散らし、自分のクルマを痛めているだけだ。
サーキットと一般道は違う!
一般道のワインディングロードでも誤解が多い。モータースポーツを見て覚えた「アウト・イン・アウト」や「スローイン・ファストアウト」を、そのまま峠道へ持ち込む人がいる。これも極めて危険だ。サーキットには対向車が存在しない。
しかし一般道ではセンターラインの向こうから大型トラックもバイクも自転車も来る。アウト側へ大きく膨らむライン取りは、そのまま対向車線への侵入につながる可能性がある。一般道で守るべきなのはレーシングラインではない。キープレフトである。
そして「スローイン・スローアウト」が必然なのだ。交差点もカーブも、自分が見えている範囲でしか安全は確認されない。見えない先に何があるか分からない以上、出口で再加速する必要すらない。一般道は競争する場所ではない。
近年は電子制御技術が飛躍的に進歩した。ABS、ESC、トラクションコントロール、ブレーキアシストなど、安全装備は年々高度化している。
【画像ギャラリー】その運転ダサいよ! 上手い、かっこいいと勘違いしている危険行為や安全運転の心構えを画像とともにおさらい!(7枚)画像ギャラリー結局は日本でもクローズドコースの充実が必要……
しかし、これらを万能装置だと思ってはいけない。電子制御はあくまでドライバーを補助するものであり、物理法則を超えることはできない。タイヤのグリップを超えれば滑る。制動距離が足りなければ止まれない。どれほど高性能な制御でもタイヤの摩擦係数そのものは増やせないのである。電子制御への過信も現代における危険な思い込みの一つだ。
ドリフト、アクセルターン、ヒール&トウ、パワースライド、カウンターステア。こうした高度な運転技術を学びたいのであれば一般道ではなくクローズドコースへ行くべきだ。ジムカーナ場、ミニサーキット、ドライビングスクール。失敗しても他人へ迷惑を掛けない環境だからこそ本当の技術が身につく。日本ではこうした施設がまだ十分とは言えない。
モータースポーツ文化を健全に育てるためにも、誰もが安全に運転技術を学べる環境整備は今後さらに必要になるだろう。










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