全長3.5mの車体に大人5人が乗れる空間を確保
パッケージングも見事でした。前述のとおり、コンパクトで軽量な3気筒エンジンをフロントに横置きにすることで、ボディ全長3530mm、ホイールベース2300mmという小ささに抑えながら、室内長1685mmを確保。FF方式のため、後輪へ駆動力を伝えるプロペラシャフトが必要なく、フロア中央の張り出しも小さくできます。カタログでは「身長175cmの人が前席と後席に同時にゆったり座れます」と、前後席の広さを訴えていました。
荷室もよく考えられており、5人乗車時でもゴルフバッグを2つ積めるスペースを備え、大きく開くハッチバックと前倒し式リアシートを組み合わせることで、乗車人数や荷物に合わせて室内を使い分けることができました。グレードによっては、運転席からバックドアを解錠できる電磁式ハッチバックオープナーも用意。最小回転半径は4.7mと、狭い道や駐車場でも扱いやすいサイズを実現していました。
エンジンルームを小さくし、そのぶんを乗員と荷物のために充てる。現在のコンパクトカーに通じる空間設計を、初代シャレードは1970年代の時点で実現していたのです。
機能を優先したデザイン 海外でも実力を証明
エクステリアデザインにも、初代シャレードの設計思想が表れていました。カタログに掲げられた言葉は、「あくまでも機能的に、あくまでも心豊かに」。丸型ヘッドランプと縦格子グリルを組み合わせたフロントフェイス、空気抵抗を抑えるウェッジシェイプ、後端をすっきりと切り落としたカムテールなど、装飾を重視した当時の国産大衆車とは異なり、機能性を生かしたスタイリングを採用しています。バックドア上部にはエアロフィンも設けられ、欧州の小型車を思わせる軽快な姿に仕上げられていました。
内装は同系色でカラーコーディネートしながら、ウッド調パネルなども採用。機能的にまとめるだけでなく、シャレードのキャラクターに合った華やかさも添えられていました。
こうした商品づくりは国内外で高く評価され、初代シャレードはモーターファン誌が選ぶ「’77カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。さらに1978年10月にパリ郊外で開催された「モービル・エコノミーラン」では、欧州の経済車を相手に1位を獲得しました。
過酷なラリーでも力を発揮します。1982年には、アフリカ・ケニアで開催されたサファリラリーに参戦し、クラス優勝を達成。大会会長からは「わずか1000ccのクルマがサファリの歴史を塗り替えた」と評され、小さな車体に秘めた耐久性と走行性能を海外でも示しました。
この初代シャレードの登場をきっかけに、国内では「リッターカー」というカテゴリーが注目され、各社から排気量1000cc前後の小型車が相次いで登場します。直列3気筒エンジンも他メーカーへ広がり、現在では日本車や欧州車の小排気量モデルに数多く採用されています。
燃費、重量、搭載スペースの利点を生かし、3気筒を小型乗用車に採用した考え方は、現在のコンパクトカーと重なるもの。日本自動車殿堂は2025年、この初代シャレードの功績を「国産大衆車の新たな指針となった」と評価し、「歴史遺産車」に選定しました。
1000ccの3気筒エンジン、FF方式、軽い車体、広い室内、使いやすいハッチバック。現在のコンパクトカーを支える要素の多くを、半世紀近く前に盛り込んでいた初代シャレード。いまや定番となった3気筒の先駆けとして、今後もその功績は語り継がれることでしょう。
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