個性的なデザインとガルウィングドアを採用
AZ-1はミッドシップ方式を採用し、ドアは軽自動車としては唯一のガルウイングドアだ。大きくスラントしたノーズ先端には丸型ヘッドライトを組み込んでいる。全高はトヨタ2000GTや初代NSXより低い1150mmだ。
最大の特徴は、独自のスケルトンモノコックと名付けたシャシーフレームを採用したことで、樹脂製のボディパネルを除いた骨格部分はモノコック構造となっている。
ボディパネルとスケルトンモノコックは分離することが可能だから、ショーカーと同じように違うデザインのボディを被せることもたやすい。
剛性が驚くほど高いスケルトンモノコック構造だからガルウイングドアを採用できた。インテリアを覗くと、レーシングカーのように高いサイドシルが目に飛び込んでくる。
ガルウイングドアのガラスはほんの少し開くだけだ。乗車定員は2名だが、キャビンはタイトな空間である。
バケットタイプのシートを2脚並べているが、助手席だけでなく運転席にもリクライニング機構はない。着座位置は驚くほど低く、まるでレーシングカートに座っているようだ。
コンパクトなメータークラスターにはホワイトメーターが収められている。中央のタコメーターはフルスケール1万1000回転表示で、レッドゾーンは9000回転だ。
しかも垂直ゼロ指針と、マニアック度の高い演出だった。が、エアコンは装備されている。タイトだからエアコンの操作パネルは縦置きだったが、狭い空間だからエアコンの効きはよかった。
気になるメカニズムは、提携しているスズキから譲り受けている。ドライバーの背後に搭載されるパワーユニットは、アルトワークスやカプチーノから譲り受けたF6A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボだ。
これに5速マニュアルのトランスミッションを組み合わせている。排気量は657ccで、最高出力は64ps/6500rpmを発生。最大トルクは8.7kg-m/4000rpmだった。
サスペンションはフロント、リアともにストラットだ。ブレーキは4輪にディスクブレーキをおごっている。
エンジンはエキサイティングだ。レスポンスはレーシングエンジンのように鋭く、ターボは3000回転を超えたあたりから本格的に稼働する。ターボの後押しによって720kgの軽量ボディを軽々と加速させ、その気になれば9000回転まで使い切ることができた。
AZ-1の走りはどうだったのか?
刺激的な加速フィールは今の軽自動車にはない魅力である。5速MTは、ちょっと繊細なタッチだが、ショートストロークだから操るのが楽しい。
それ以上に驚かされるのがレーシングカーに近いシャープなハンドリング特性だ。「未体験ハンドリングマシン」のキャッチフレーズはウソじゃない。
ロードスター風に言えば「人馬一体」の痛快な走りになるのだろう。が、実際にステアリングを握り、ホットに走ってみると、ピーキーな面も顔を出した。
箱根のワインディングロードやサーキットを攻めると、時として手に汗握るスリリングな動きに翻弄されることがあったのである。
タイヤは前後とも155/65R13だ。ABSもトラクションコントロールもない時代、この13インチタイヤが悪さをした。
振り回す楽しさは格別だが、調子に乗って攻めすぎたり、ラフなアクセルワークをすると、一気にクルマは挙動を乱し、場合によってはスピンに陥る。オーナーのなかには、恐い思いをした人が少なくないはずだ。
同じミッドシップのビートは、前輪が13インチ、後輪は14インチの異サイズタイヤを履いている。そのため挙動は素直で、限界域でもコントロールしやすかった。
これに対しAZ-1はスパルタンなじゃじゃ馬で、持て余すことも少なくなかったのである。が、これほどマニアックで、ストレート勝負のスポーツモデルは二度と出てこないだろう。開発者の顔が見える究極のマイクロスポーツだった。
コメント
コメントの使い方AZ-1発売のこの時代にもABSはありました。他にも間違いの開発過程が記載されており、全てが正しい記事ではないようです。