テスラ流なら成立する!? 問題は“操作方法がバラバラ”なクルマ
タッチパネル操作で最も大きなインパクトを与えたクルマのひとつはテスラだろう。ダッシュボードには従来のクルマのようなスイッチ類がほとんどなく、センターに非常に大きなモニターを配置し、そこからさまざまな設定を行う。サンルーフの開閉、アンビエントライト、シートポジション、ドアロックなど、実に多くの機能をひとつの画面に集約している。
ここまで徹底してタッチパネル中心のインターフェースに割り切れば、ひとつの思想として成立する。大きな画面を用意し、さらに音声コマンドを組み合わせれば、物理スイッチを減らすことにも合理性がある。
一方で、タッチパネルと物理スイッチを中途半端に組み合わせ、ダッシュボードの右から左までさまざまな操作方法が散りばめられているようなクルマはドライバーにとって非常に操作しづらいものになりかねない。
最近の新型車を試乗すると、まず運転席に座ってドライビングポジションを整えるだけでも時間がかかることがある。電動シートや電動テレスコピックのスイッチがどこにあるのかを探すところから始まるからだ。シフト操作も同様で、従来のレバー式からダイヤル式、コラムレバー式、プッシュボタン式などへと変化している。
そうしたクルマに初めて乗ると、走り出すまでに操作方法を学習する必要があるほどだ。試乗時間が1時間程度しかないのに、その10分ほどを停車状態で操作方法を覚えるために費やさざるを得ないことも珍しくない。
タッチパネルは実はコストにも効く! メーカーが採用したがる理由
クルマはスマートフォンや家電とは違い走りながら操作する必要がある。だからこそ、操作系には独自の考え方が必要だろう。そして、タッチパネルが増えている理由は、単純に先進的だからというだけではない。実はコスト面も大きな理由のひとつだ。タッチパネルスイッチというと非常に先進的で高級な装備のように感じる。
しかし、一度タッチパネルのシステムを構築してしまえば、その後の部品としてのコストは下げやすい。それに対して、物理スイッチは車種ごとに形状や大きさが異なる。インテリアデザインに合わせて専用のスイッチを設計し、金型を作り、成形し、さらにスイッチとして機能させなければならない。複数の車種で異なるデザインを採用すれば、その分だけ開発や生産の手間も増える。
そう考えると、ひとつの大型ディスプレイにさまざまな機能を集約し、ソフトウェアによって表示や操作内容を変更できるタッチパネルはメーカーにとって非常に合理的なシステムなのである。
もちろん、ユーザーにとってもメリットはある。画面表示を変更することで機能を追加したり、アップデートしたりできる。インテリアもすっきりとまとめやすい。だからタッチパネルそのものを否定するつもりはない。
ロードスターやジープ ラングラーが使いやすい理由
ただし、メーカーにとって合理的であることと、ドライバーにとって使いやすいことは、必ずしも一致しない。例えばマツダ ロードスターはドライビングに集中できる操作系を持ったクルマのひとつだと思う。ステアリングに手をかけたポジションから少し手を伸ばせば、さまざまな機能に手が届く。
そして、昔ながらのダイヤル式エアコンなど触覚だけで操作できるスイッチが簡潔に配置されている。目で確認しなくても操作できるというのは走行中のクルマにとって非常に重要なことだ。ジープ ラングラーやランドローバー ディフェンダーなども物理スイッチを大切にしているモデルと言える。
例えば雪山へ行き、厚手の保温グローブをしたまま運転するとき、タッチパネルの小さなスイッチを正確に操作するのは難しい。しかし、大きくて明確な物理スイッチなら、手の触覚だけで場所を確認し、操作できる。物理スイッチにも弱点はある。操作頻度が高ければ経年変化によって接点不良が起きる可能性があるし、樹脂部品ならひび割れや破損が起こることもある。
物理スイッチだから絶対に優れているというわけではない。重要なのはドライバーが操作するまでに長い時間を必要としたり、使い方を理解するまでに学習が必要だったりする操作系では困るということだ。
デザインとして、スイッチを目立たなくする、小さくする、どこにあるのか分かりにくくする。そうした手法がデザイン上の表現として存在することは理解できる。しかし、ドライバーの立場からすれば、まず優先すべきなのは使いやすさだ。その上で、見た目のスタイリッシュさやデザイン性、高級感のある手触りなどが備わっていれば理想的だろう。




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