【もし高速道路上で「あおり運転」に遭遇したら】 東名死亡事故で「出来ること」はあったか

■「先ほど110番通報しました!」

 そしてもし進路を塞がれて路側帯に停車を余儀なくされ、相手が降車して出てきた時は、ウインドウを閉めてドアをロックする。この時も動作で謝罪の意思を示す。

 自車を蹴飛ばされたりキズ付けられるかも知れないが、自分や同乗者の安全を優先させる。この後で車両の登録番号(ナンバープレートの記載)を控えておけば、後日訴えることも可能だ。

 相手が緊急脱出ハンマーなどを所持して、ウインドーガラスを割られたりした時は、車両を前進あるいは後退させて避難する方法もあるが、それが原因で衝突事故が発生する危険も大きい。状況に応じて判断する。

 危険な相手と向き合った時は、改めて謝罪する。それでも危害を加えられそうになったら、大きな声でハッキリと「先ほど110番に電話しました! もうすぐパトカーが来ます! ご不満なら私を警察に訴えてください!」という。この時も「自分が悪かった」という態度を崩さない。

■警察の取り締まり体制も、司法の処罰体制も、対応できていない

 このあたりの対処方法を警察はどのように考えているのか。運転中の110番通報が緊急避難に該当するか否かも含めて、警察庁に問い合わせた。すると「この事故を管轄している神奈川県警察に問い合わせて欲しい」といわれた。

 そこで神奈川県警察に問い合わせると「まずは質問事項をファックスで送って欲しい。それを検討した上で返答する。ただし返答できない場合もある。いずれにしろ今は返答できない」といわれた。

 今回のような事故(というよりも事件)を繰り返さないためにも、警察にはさまざまなケースに応じた対処方法を示して欲しい。

 今回の東名事故につながった「あおり運転」の加害者は「過失運転致死傷罪」で逮捕されたが、「危険運転致死傷罪ではないのか」という意見が多い。

 過失運転致死傷罪になった理由は、危険運転致死傷罪の構成要件を満たしていないためだが、それはこの法律が今回のような事故を想定していないからだ。

 危険運転致死傷罪は、アルコールや薬物の服用、極端な高速走行など、重大事故が容易に予想される故意を伴った危険な運転に基づく事故に適用される。

 今回の件も、飲酒運転や暴走と同様、重大事故が容易に予想される故意を伴う事故と判断できる。いいかえれば、社会通念に基づいても、危険運転致死傷罪の適用が妥当だ。

■「譲る」のではなく、「入らせる」

 同じような悲劇を繰り返さないためには、どうすれば良いのか。善良なドライバーである読者諸兄の立場で考えたい。

 最も大切なことは、煽られたりする原因を作らないことだ。よくあるのは無理な割り込みをさせなかったことで、相手が腹を立てるケースだろう。そもそも無理な割り込みをする行為自体が乱暴だから、自車の後方に割り込んだ後、煽ってきたりする可能性が高い。

 こういう時は気持ちの持ち方が大切になる。「乱暴なドライバーに道を譲る」のは誰でも嫌だ。

 しかしそう考えるのは、(こうした記事を長々とここまで熟読する)読者諸兄のような優れたドライバーには相応しくない。読者諸兄には「交通のリーダー」になっていただきたい。

 例えば乱暴なドライバーが割り込もうとした時は、「譲る」のではなく、交通のリーダーとして自車の前に「入らせる」のだ。

 そうすることによって、その場面における車両の流れがスムーズになり、発生したかも知れない交通事故を防ぐことができる。読者諸兄が乱暴なドライバーを自車の前に入らせたことで、安全が確保されるのだ。

 こういったリーダーの資格を備えたドライバーは、読者諸兄を含めて意外に多い。

 例えば東京の首都高速道路。交通量の多い時間帯に3台が連なって走行している時、短い加速車線からもう1台のクルマが進入してきたとする。

 そうすると、先頭にいた車両は加速して、この後ろの車両は追い越し車線にレーンチェンジ、さらにその後ろの車両は減速して、加速車線の車両が滑らかに本線へ入るシーンがある。

 偶然に連なった3台が見事なフォーメーションを見せ、進入する車両も巧みな速度調節で交通の流れを一切乱さない。おそらく彼らはすべて、さまざまな状況においてリーダーシップを発揮しているだろう。

 読者諸兄には、これからも交通のリーダーシップを取り続けることをお願いしたいと思います。

次ページは : ■本稿のまとめ(by編集部)

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