読者諸兄もご存じのとおり、2017年10月10日、神奈川県の東名高速道路で痛ましい死亡事故を発生させた容疑者を、神奈川県警が自動車運転処罰法違反で逮捕した(追突事故発生は同年6月)。
乱暴なドライバーによって進路を塞がれた車両が追い越し車線上に停車して、後続の大型トラックに追突され、夫婦が死亡した事故だ。
この件については反響が大きく、マスコミは連日にわたり報道した。神奈川県警察に問い合わせると「多数の電話がかかり、加害者には殺人罪を適用すべきだとか、いろいろな意見を受けた」という。
高速道路という身近な場所で発生した犯罪で、乱暴な運転に脅威を感じた経験のあるドライバーも少なくないのだろう。
そこで高速道路上で煽られるような状況に陥った場合、どうすれば良いのかを考えたい。
文:渡辺陽一郎 写真:Shutterstock.com
※ご指摘を受けまして記事を一部訂正いたしました。ありがとうございます
■まずは左車線に移動すること
まず大前提となるのは、いかなる理由があっても、高速道路の「車線上」に停車してはならないことだ。
先般の事故は追い越し車線上で発生したが、最も路側帯に近い一番左側の第1走行車線にも停車してはならない。追突事故を誘発する危険がきわめて高いからだ。
具体的なプロセスを追って考える。
まず中央の第2走行車線、あるいは追い越し車線上で乱暴なドライバーに後ろから煽られたら、可能な限り早いタイミングで第1走行車線(一番左のレーン)に移動する。道を譲れば、相手の気持ちが静まることも多いからだ。
いきなり前方に割り込まれた時はかなり危険だ。乱暴なドライバーは、単純に追い抜くだけでなく、今回の事故のようにブレーキを踏む。そうなれば自車も減速せざるを得ない。
これは自分および同乗者が著しい危険に遭遇している緊急事態だから、制動しながら即座にハザードランプを点滅させる。
この時にもし自車が第2走行車線、あるいは追い越し車線を走っていた時は、ハザードランプを方向指示機に切り替えて第1走行車線(つまり左車線)に移動する。いずれにしろ車両を路肩に向かわせる。
■通報しない時のリスクよりも、するリスクのほうが小さい時は
問題はこの後だ。相手の車両と着座位置が同程度で互いに顔を合わせたり、相手が自分をルームミラーなどで確認できる状態なら、手を挙げるなどして謝罪の意思を表示する。張り合うと危険が増すだけだから、「危険な状態から脱すること」を最優先させる。
それでも執拗に追い詰められた時はどうするか。
携帯電話を持っていたらその時点で110番通報を行う。同乗者に電話してもらうのが理想だが、1人で乗車している時は、走行中でも構わないから安全に配慮しつつ110番通報を行う。
助手席やセンターコンソールにでも電話を置いて大声で話せば、ハンドルを操作していても相手の警察官に声が伝わる。場所は高速道路の上りか下りのどのあたりか、可能であれば路側帯に設置されたキロポストの数字を告げる。
通常の電話を走行中に使うのは、ハンズフリー以外は違法だが、この場合は刑法の緊急避難に該当するはずだ。自分や同乗者におよぶ危難を避けるための行為で、なおかつ運転中に電話をしたことで発生する危険よりも、110番通報をしなかったことで生じる危険の方が明らかに甚大であるからだ。
(編集部註/警察庁の調べによると、「走行中に前方の車両をあおる」などしたとして、道交法の車間距離保持義務違反で摘発した件数は全国で7625件(2016年)に及ぶ。うち高速道路上での違反は約9割に近い6690件だった)
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