ホンダ S2000
S2000は、ホンダの創設50周年を記念して企画され、1999年春に市販されたフルオープンのピュアスポーツカーだ。ホンダにとってはS800以来のFRスポーツで、パワーユニットやボディ設計にも当時の最新テクノロジーを多く採用している。
車名にあるようにデビュー時のエンジンは、2Lの排気量だ。F20C型直列4気筒DOHC・VTECは圧縮比を11.7と高く取り、リッター当たり出力は125psに達した。
当然、レーシングエンジンのようにビュンビュン回り、その気になれば9000回転まで使いきることができた。
ショートストロークの6速MTは変速するのが楽しい。インホイールタイプのダブルウイッシュボーンサスペンションは、ドライバーが操っている感覚が強く、主人公になれる。
電動パワーステアリングのステアリングギアを可変式にした「タイプV」は、さらにクイックで、身のこなしは軽やかだ。意のままに走れる。2005年には2.2Lエンジンにして扱いやすさを増した。
現役のときはパンチの効いた2Lモデルに惹かれたが、今になってみるとバランスのよい2.2Lモデルのほうが実力を引き出しやすいし、足にも手を入れたから好印象と感じる。
マツダ RX-8
FD3S型RX-7は2002年8月に惜しまれつつ生産を終了した。これに代わるロータリーエンジン搭載車として東京モーターショーでベールを脱いだのが、観音開きドアを採用した「RX-EVOLV(エボルヴ)」である。
このショーカーを発展させた4ドアのロータリー・スポーツがマツダ RX-8で、2003年4月に発売。パワーユニットは吸排気ポートをサイド方式に改めた新世代の13B-MPS型ロータリーだ。
RX-7はターボだったが、RX-8は自然吸気のロータリーを搭載する。4速ATと5速MTもあるが、主役は高性能ロータリーに6速MTを組み合わせたタイプSだ。
3B-MSPと呼ばれる2ローターのロータリーは9000回転まで苦もなく回るが、タイプS以外は最高出力を下げているため実用域のトルクもそれなりに太く、扱いやすかった。
2008年以降はタイプRSもレギュラーガソリン仕様となったため、高回転域の伸びは今一歩となっている。が、8000回転オーバーまでモーターのように気持ちよく回った。
観音開きドアを採用するためにシャシーの剛性は高く、サスペンションもダブルウイッシュボーンにマルチリンクの組み合わせだからワインディングロードでも意のままの走りを楽しめる。
燃費が今一歩だったし、基本設計が古くなったため退いたが、走りの実力は今も一級だ。痛快なスポーツクーペだったから、違う形での再デビューを期待したい。
三菱 FTO
ドライビングの楽しさを徹底追及し、1994年秋にセンセーショナルなデビューを飾ったのが三菱FTOだ。
1970年代に話題をまいたギャランクーペFTOから車名をもらっているが、共通するところはまったくない。が、ご先祖以上に個性の強いデザインの2ドアクーペである。
時代に先駆けて1735mmのワイドボディを採用し、プロポーションも独特だった。ちょっと進み過ぎていたのか、当時は今ひとつの販売に終わっている。
が、FTOは今につながる技術を積極的に採用していた。最大の特徴は、主役となる2Lエンジンを贅沢なV型6気筒DOHCにしたことだ。
GTOと同じように電子制御の可変吸気システムを採用し、高性能版には可変同弁機構のMIVECも組み込んでいる。
トランスミッションは5速MTもあるが、注目は「インベックスII」と名付けたスポーツモード付きの4速ATを日本で初めて採用したことだ。今では珍しくないが、セレクターの「+」と「-」を駆使してスポーティな変速を楽しむことができた。
後期モデルでは5速ATに進化し、さらに気持ちいい走りを引き出すことができるようになっている。V型6気筒エンジンはスムーズで軽やかに回ったし、ハンドリングも重さを感じさせない軽快なフィーリングだった。
懐の深い走りを見せ、快適性もそれなりに確保していたが、販売は低空飛行を続けている。そのために21世紀を前にGTOとともに姿を消した。素性のいい上質なスポーツクーペだったが、魅力が理解されず残念な結果に終わっている。
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