「骨の髄までスバリスト」から見る 今回のスバル完成検査問題

■問題のポイントはどこか?

 そもそも、自動車工場の完成検査員の認定や育成の基準は各メーカーに委ねられているため、現場での実務経験なしでも完成検査員として認定することは可能とされています。

 しかしSUBARUは、「完成検査員になるためには現場の経験を積む必要がある」との考えにより、あえて検査員資格未習得のスタッフを完成検査チームに入れました。

 検査員と無資格のスタッフはマンツーマンで検査業務を行い、やがて検査員に必要な知識と技量を得たと認められたスタッフに限り、単独でも検査を行って押印もしていた……というのが今回の問題に関する私の理解です。

 正直、ごくごく個人的には「そんなに職人っぽいシステムで検査していたのか!」とむしろ感動さえしましたが、これを業務規定に記載していなかったこと、単独で押印までしていたことがルール違反となりました。

 それにしたってその実施者は「充分知識や技術があるスタッフ」なのだから、配慮や工夫次第では現状の教育システムのままでも問題にならなかったはずだと思うと、かえすがえすも残念でなりません。

 規定や規律、意識改革も含めて、再発防止のための充分な対策を望みます。

■かつてメーカー期間工として働いていた

 過去にダイハツで期間工として働いた経験や、自動車工場の取材経験、そして他の自動車工場に勤務する友人知人から聞いた話などから断言できることは、品質検査は自動車工場でもっとも重視される仕事のひとつなので、そこで手を抜くようなことは絶対に考えられません。

 自動車工場では各工程ごとにウンザリするほどひたすら検査を繰り返しています。

 長年にわたりSUBARUのエンジニアや生産現場の人を取材していると、今もなお昔ながらの職人気質の強い人が多いことと、生産現場の強さというのを実感します。

 スバル360やスバル1000の時代から他にはない高性能・高品質なクルマを作り続けているというプライド、クルマ作りにかける職人気質的なこだわりがある意味足かせとなり、今回の問題点が長年にわたり是正されなかったように思いました。

■もはやスバルは「群馬の小さいメーカー」ではない

 SUBARUは自動車メーカーとしては小規模ながら、2016年には初の年間100万台超えを達成したなど、その規模はこれからもどんどん大きくなっていくでしょう。

 ブランド力もここ20年ほどの間に劇的に向上しました。今回のこと以外でも、昔は問題がなかったことでも今では許されないという部分が他にあるかも知れません。

 SUBARUの人は、クルマ作りに並々ならぬ誇りを思っている一方で「ウチは自動車メーカーとしては弱小ですから……」などと自虐的な感覚を持っている場合が多いのも見受けられますが、これからは名実ともに「大メーカー」としての立ち振る舞いというか、今のSUBARUブランドにふさわしい高い意識を持って、今回のような残念なことにならないようにしていただきたいと切に願います。

 SUBARU車に乗っていて何よりも得難いものは「誇り」です。

 かくいう私自身も、世界に誇れるSUBARU車のユーザーとしてもっと高い意識を持ち、共に向上しなければならないと思う契機にもなりました。

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